犬連れ登山「千葉県からでも気軽に行ける紅葉の低山」小町山(茨城県)

眺望と紅葉は絶品! でも穴場では……。
2024年12月7日

千葉県で紅葉登山をしたい。
かれこれ10年くらいそう考えている。

しかし、いくら探してもそれが叶う山がない。
登山自体を楽しめる山はたくさんあるのだが、紅葉のトンネルを歩けるようなコースが見当たらないのだ。
県内の有名どころは大体が大規模な公園、車道沿い、清流沿いで登山道ではない。

だから県外の
妙義山(群馬県)
https://large-dog.iehikaku.com/archives/3573
石尊山(群馬県)
https://large-dog.iehikaku.com/archives/8462
生瀬富士(茨城県)
https://large-dog.iehikaku.com/archives/8550
などに行ってしまうのだが、やはり自宅から遠い。
帰宅後、余韻に浸ってグイグイ飲みたいのに、コロッと寝てしまう。

近場に紅葉の穴場山はないものか……。
ある日ネットで探していると、真っ赤に色づいた木道の画像を見つけた。

朝日峠展望公園??
なんだ、茨城県じゃないか。
念のため自宅からの移動時間(クルマ)を調べる。

1時間7分!?
わが千葉県登山の聖地、高宕山(1時間14分)へ行くよりむしろ早いではないか!
https://large-dog.iehikaku.com/archives/3685

灯台下暗し。
そういえば、わが家がある千葉県北西部は、同県内の南房総よりも茨城県の方が近かった!

大至急、朝日峠展望公園に登山コースがあるのか調べてみた。
すると次のことがわかった。
1.朝日峠展望公園には、「もみじ谷」という紅葉の木道がある
2.朝日峠展望公園の展望台からの眺めは絶景
3.朝日峠展望公園は登山道で小町山(361m)と鬼越山(372m)につながっている。鬼越山の先にある「もみじの森」の紅葉は「もみじ谷」よりも素晴らしい
4.小町山の山頂にはパラグライダーの発着場があり、そこからの眺めも絶景
5.近くには大人気の宝篋山(461m)もあるが紅葉は小町山の方が上

千葉県の自宅から近い。
紅葉が素晴らしい。
山頂からの眺望もベリーナイス。
まさかこんな穴場の山があったとは!
これは行かないわけにはいかない。

例年の紅葉の見頃は12月上旬らしい。
だが、今年(2024年)は猛暑の影響で、もみじ谷は12月に入った途端に真っ赤になる前に散りはじめている。
一方、もみじの森は、まだ緑の葉が多いそうだ。

両方楽しむなら今しかない!
12月7日に行くことにした。


7時40分、小町の館の駐車場(無料)に到着。
すでにほぼ満車。
団体の登山者が多い。
続々と出発している。


駐車場にはこんなに立派なトイレがあった。
しかも温水洗浄便座付き!


8時8分、登山開始。
気温7℃。
しばらく田んぼ沿いの舗装道路を歩く。

200~300mほど進むと、軽トラがやっと通れるくらいの林道に入る。
脇に小川が流れている。
標高40mくらいだから渓流とは言えないが、水の透明度は高い。
周辺はコスモスの花が残る里山の雰囲気。


道路の先に平屋の古い木造建築が見えてきた。
その前にたくさんのカラフルなバンダナがはためいている。
登山者の安全を願っているそうだ。
ここからが本格的な登山道になる。

とはいえ、要所要所に行き先を示す標識が設置してあるし、沢沿いのコースなのに足元はジメジメしていないし、歩きやすい。
しばらく杉とコナラの森。
木々の間からの陽光がキラキラと点滅するフラッシュライトのように眩しい。

天気予報では午前中雲多めの晴れ、午後は曇り。
だが今のところ快晴だ。
見上げるとコナラの茶色い紅葉の後ろに爽やかな青空が広がっている。

小川のせせらぎをBGMに黙々と歩く。
「水がきれいだね」「これはミズナラじゃなくてコナラだね」
泰楽と話したい。
だが、10m間隔で人が歩いているから恥ずかしくてできない。


途中で渡渉が2~3ヶ所あり。
朝日峠展望公園までは手軽に行けるらしいが、スニーカーでは苦労すると思う。


1km・25分で「もみじ谷」に到着。
ユーチューブでは木道沿いに真っ赤なカエデが連なっていた。
だが、この日はすでに5割が散っていた。
それなのに緑の葉もある。
やはり今年の猛暑で色づきがへんてこりんのようだ。

それにここは期待していたほどの規模ではなかった。
木道の長さは70~80mで、カエデの数も20本程度。
このレベルなら千葉県内の公園でも味わえる。

そしてとにかく人が多い。
感覚的には3月の高尾山よりも犬連れということで気を使った。
登山者世界一の山のオフシーズンより、紅葉ピークのここの方が混むということか。


文句を言いつつ、撮り方によっては美しいもみじ谷の紅葉。

先に進むと、先ほどより小規模なもみじ谷(木道)がもう一ヶ所あった。
こちらは9割散っていた――。

ちょっぴりがっかりしつつ、歩を進める。
すると、いきなり視界がどーんと開けた。


朝日峠展望公園の広場だ。
45分、1.9㎞で到着。
目の前に真っ赤に燃え盛るようなカエデの大木。
高さも幅も10mくらいある。
かなり迫力のある紅葉だったが、3割くらいは散っていた。

とりあえず展望台まで登ってみる。
西側の斜面から上がっていくと、目指す東側の稜線が明るくなっていく。
あの光のラインの向こう側になにが広がっている!?
あと3歩、2歩、1歩――!


むっと首を伸ばすと、はるか彼方に鏡のようにきらきらと輝く海が水平線の向こうまで広がっていた。
「おぉー、ここからは海が望めるのか!」
そよ風に吹かれ、泰楽と2人で立ち尽くす。

そこで疑問が湧いた。
「あれ!? 朝日峠と海の間には霞ヶ浦があったはずだよな?」
大至急、地図アプリで現在地を確認。


間違いなく目の前に広がっているのは霞ケ浦だった。
だが、デカい。デカすぎる!
昨年行った日本一の琵琶湖よりも大きく見える。

どうしても納得がいかない。
その場で両方の大きさを調べてみた。
霞ヶ浦は東西に長く、端から端まで20㎞強。
私は今、その西側から眺めている。
一方で琵琶湖は南北に長く50㎞強もあるが、東西は20㎞ほど。
私が眺めたのは西側からだった。
つまり、眺めた視点からでは霞ヶ浦の方がデカくみえるのだ。

とにかく朝日峠展望公園からは、大きな大きな霞ケ浦を一望できた。
「泰楽、すげー眺めだな」とつぶやきつつ、視線を右にずらす。


ビル群にニョキっと突き出すとんがり。
東京スカイツリーだ。


さらに右には雪を頂いた富士山がでんっと顔を出していた。

手前にはつくばの景観100に選定されている宝篋山


そしてこれから登る小町山と続き、山頂のパラグライダーの発着場が見えた。
山肌の紅葉のグラデーションが美しい。


振り返ると筑波山の猫のような耳がそびえていた。
なんて贅沢。
たとえ紅葉がなくても来る価値はある。

20分くらいかけてお腹いっぱい景色を楽しみ、小町山へ向かう。
その途中に公園の駐車場があった。


立派なトイレも。
ここからなら展望台まで5分で行ける。

駐車場からはコナラの森。
いよいよ紅葉祭りの開始か!?


と期待しかけたら100mくらいで杉林に。
つまらないので自然と早歩きになる。
先行者をどんどん抜く。
誰も見えなくなった頃、前方斜め左から陽が差してきた。
同時に杉の影たちがまっすぐこちらに伸びる。
地面に巨大なストライプが何本も描かれた。
これはこれで美しい。
生まれて初めて杉林も悪くないと感じた。


その後もだらだらと登っていたら、突然まっすぐな急登が現れた。
左側に手すりのようなロープが張られている。
えっちらおっちら登る。
結局、この急坂は100mくらい続いていた。

やっと稜線に出ると常緑樹(スダジイ?)の森。
濃い緑一色。
つまらない。
「もしかして、ここは外れの山ではないでしょうか?」と泰楽と話しながらだらだらと登る。


そろそろおやつで気分転換を、と思っていたところで左側の視界がすこーんと突き抜けた。
「もぐもぐ処」の看板。
ベンチとテーブルが並んでいる。
おやつタイムとしますか。


泰楽は普段水をほとんど飲まない。
ブリーダーいわく、ゴールデンドゥードルはそういうものらしい。
なのでご飯やおやつを上げる際は、水に浮かべるようにしている。
この日は犬用ソーセージを浮かべた。

ここから眺める晩秋のグラデーションも綺麗だった。
食べながらヤマレコアプリで現在地を確認。
んっ!? 100m後ろが小町山の山頂ではないか! 


1時間57分・3.85kmで山頂に到着。
15m四方くらいのスペースに25人の登山者が集まっていた。
なぜそんなに人気?
とりあえず山頂標識を確認しに行くと、正面に筑波山がでんっと構えていた。
裾野が美しい錦秋に彩られている。

たしかに見ごたえはあるが眺望が開けているのはそこだけ。
本当はここでランチをしたかったが人が多すぎる。
そそくさと先へ行こうとしたら「きゃ~っ!」という黄色っぽい声が上がった。
「触っていいですか?」「なんていう犬種ですか?」「何歳ですか?」
泰楽タイムが始まった。

泰楽はこう見えて意外と無愛想だ。
興味のない人に対しては、いないかのような表情で遠くを見つめる。
特に高齢の男性は苦手のようだ。


「泰楽、どうする?」
聞いてみると「もちろんOKですよ!」とお尻をふりふりして大先輩だちに近づいた。

理由は不明だがご機嫌の泰楽。
何度も何度も彼女たちの足に自分の背中を擦り付けていた。
なお、この大先輩たちの集団は10人以上いて、なぜだか登山コースではない方向へ去って行った。
その理由は下山後に分かる。

山頂はパラグライダーの発着場になっているはずだが見当たらない。
仕方がないので先に進む。
山頂から先は笹藪を切り開いたコースになっていて表筑波スカイラインにつながっていた。
道路沿いには3~4台停められる駐車場になっている。
登山コースはそこを通り抜け、道路沿いに続いていた。

そこでやっと真っ赤な紅葉が2本登場。
2割くらい散っていたが、まだまだ見頃。
でもこれだけ?
そろそろもみじの森では?
ちょっと焦りつつ次の目的地の鬼越山を目指す。


ヤマレコアプリの案内では、クルマが通れそうなほど広い登山道から、ほっそい脇道に入る模様。
従う。


そこから50mで鬼越山の山頂に到着。
ここでは霞ケ浦方面のみ展望が開けていた。
でもそれだけ。
しかも山頂から先には進めない。
つまり戻らなければならない。
行かなくてもよかったかな。

その先では左側に紅葉が見えてきた。
ちょうど脇道も続いている。
行ってみる。


すぐに真っ赤な巨木が登場。
こちらも2割は散っているようだ。
だが、その分、登山道も真っ赤。
じっくり泰楽と撮影会。


ちなみに、この向かい側にあったカエデが、今回の真っ赤大賞だった。

そのとき2人組のおばちゃんが向かい側からやってきた。
「この先にここよりも赤い場所はありますか?」
「もみじは50m先にたくさんありますよ。でも赤さはダメ。今年はくすんじゃってる」

今年の不作は百も承知。
期待に胸を膨らませて進む。


すると本当にもみじの森が広がっているではないか!
ちょうど真下にベンチとテーブルが設置されており、そこを中心に360度色づいたカエデが囲んでいた。

3割はまだ緑。
早かったか?
でもあと1週間遅らせたら、もみじ谷の方が灰色の世界になっていただろう。
だから今日でいいのだ!


やっと満足できる場所に出会えた。
このベンチでランチタイムだ。


ご飯を食べている最中、無意識にずっと上を眺めていた。
前後左右だけでなく、頭上も鮮やかに色づいている。
そこは紅葉ドームだった。

こんなに居心地の良いベンチは生まれて初めてかもしれない。
あまりに気持ちがいいので、普段はあげないデザートのたいやきを少し泰楽に与えた。
当然泰楽も上機嫌。
(わが家は人間の食べ物をあげないのです)

親子でニコニコしながら後片付けをする。
「ここに座ってもいいですか?」
おばちゃんの2人組に話しかけられた。
「どうぞ、どうぞ。この先にも紅葉はありますか?」
「すぐそこにあるわよ。黄色いけど」

行ってみると、なるほど黄色系カエデが広がっていた。
そこでもベンチとテーブルが並び、10人くらいが飲食していた。

その先は線で区切ったように紅葉ゼロ。
Uターンしてバリエーションルートで下山。
その間も紅葉無し。


30分ほどで東城寺に出た。
そこにも立派な紅葉が。
まだ6分咲き程度だったが見事だった。


東城寺にも公衆トイレがあった。
ありがたい。

その先の登山道も単調だった。
9.6㎞・5時間20分でゴール。

小町山は「眺望、紅葉、手軽さ」のバランスがいい。
ただし、人がいっぱいでまったく穴場ではないし、単調なコースが続くので途中で飽きる。
それでも、ぜひまた同じ時期にリピートしたい。
次回は、公園からのピストンとか違うコースを選ぶつもりだ。

時間が余ったのでクルマで朝日峠展望公園へ。

ちょうどバラグライダーをやっていた。


こんなに近くで見たのは初めて。
翼が風を受けてぶわぶわぶわっと大きな音で膨らみ、ギュイーンと飛び立っていく。
想像よりもずっと迫力がある。
泰楽より私の方がびっくりした。

パラグライダーといえば、小町山頂上の発着場に行けなかったのが心残り。
幸いクルマで山頂近くまで行けるので確認することにした。


なんてことはない。
大先輩が向かって行ったのがパラグライダーの発着場だった。
山頂から50mしか離れていなかった。
こんなに山頂から近くて見晴らしがいいのだから行かなきゃ損。


帰りに清滝寺で水汲み。
ここは駐車場がある小町の館から1kmしか離れていない。
コンパクトで高性能。
小町山は本当にいいところだ。

さて、次回からは雪山だ!

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