白谷ノ丸・大蔵高丸(山梨県)「白砂の山頂と富士山の絶景稜線」~犬と登山

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鮮やかなツツジに仰天! 登山初心者にもおすすめの天空の散歩道
2025年5月24日

手軽に稜線歩きがしたい。
ただの稜線ではダメだ。
視界がどーんっと突き抜けて、左右が切れ落ちている1本道がいい。

ところが、そんな清々しい山は、なかなかない。
わが千葉県にも小鋸山やトビ岩山といった見晴らしのいい稜線はあるにはある。
だが、4月に入るとマダニとヤマビルの嵐!


小鋸山↑
https://large-dog.iehikaku.com/archives/8838

なのでこの時期は、できるだけ標高が高い山がいい。
千葉県から近くて、そんな理想的な山はあるのか??

候補に挙がったのは丹沢の行者ヶ岳(標高1181m)と甲州アルプスの白谷ノ丸(1920m)
両方とも障害物なしの稜線と富士山の大展望を味わえるらしい。
どちらにする?

天気予報は、どちらもよくない。
1日中曇りで、夕方には雨が降るかもしれない。
だが、西に行くほど雨の確立が下がるようだ。

ならばより西の白谷ノ丸に決定。
とにかく稜線が大事。
富士山は「見えればラッキー」という気持ちで出かけた。

8時前に登山口手前の焼山沢真木線の入り口に到着。
なんと通行止め! 
前日のヤマレコ・ヤマップでは、みんな登山口がある湯ノ沢峠にクルマで行っているのになぜ!?

大至急、スマホを手に取るが電波が届いていない。
雨が降り始める前に帰りたいのにーー。

仕方がないので天目山温泉近くまで戻る。
電波をキャッチ。
「焼山沢真木線 通行止め」と検索すると、一発で山梨県のHPが出てきた(上の図)。

どれどれーー?
きっちり8月まで通行止めと書いてある!

その代わり、県道218号から枝分かれしている林道日川線から湯ノ沢峠に行けるようだ(上の図)。
この時点で30分以上のロス。
加えて林道日川線方面に行けば合計1時間以上のロス。
しかしながら、頭の中はすっかり稜線モード。
今さら近場の山に登る気にはなれない。
「仕方がない、仕方がない」と自分自身と嫁さん、泰楽に言い聞かせてアクセルを踏んだ。


林道日川線↑についてネット情報では、「手前の砂利道が大変」という記述が多い。
だが、実際は未舗装の林道としては、むしろ整備されている方だった。
普通の乗用車でもスピードを出さなければ余裕で走れる。


9時30分、湯ノ沢峠の駐車場に到着。
クルマから出た瞬間、ひやっとする。
気温10℃
5月下旬なのに3月並みの肌寒さだ。
だが、視界に入るのは鮮やかな新緑。
それに湿度が低くてさわやかさを感じる。

アップルウォッチで標高を確認すると1650mだった。
なるほど、空気が新鮮に感じるはずだ。
この駐車場スペースには10台ほど停められて、綺麗なバイオトイレもあった。
さらにちょっと奥には避難小屋も。
かなり整備が行き届いているといえるだろう。


9時57分、登山開始。
100m進むと「ハマイバ丸方面」と「白谷ノ丸方面」の分岐に出る。
前者はここから約2.6㎞。
一方は後者はたった1㎞だ。

なので多くの人は、先にハマイバ丸に登ってから、戻ってきて白谷ノ丸に向かう。
だが、今回は午後から雲が多くなる予報。
そのため、先に眺望のいい白谷ノ丸に登ることにした。


ここからは、ずっと中程度の登りになる。
山頂まで短い距離だが、楽々ではない。
しかし、ちっともつまらなくはなかった。
前半は森の中だが、ダケカンバ、ミズナラ、ブナなどの生まれたての葉っぱが瑞々しくて美しい。
目の前で酸素を発しているのが見えそうなくらい若々しいパステルグリーンに包まれた。

低山にはないツンとした空気というのも千葉県育ちの私たちをわくわくさせる。
「ホ~、ホケキョ!」
すでにベテランの域に達した声が響き渡る。
なんども繰り返すのでうるさいくらいだ。

そこで嫁さんが前方を指さして叫んだ。
「うわ~、なんて鮮やかなムラサキ!」


目を凝らすと、100先にむわっと燃え上がるようなムラサキの塊があった。
幼いパステルグリーンを押しのけるような存在感。
ミツバツツジだ。

標高1700mにツツジ!?
普段、低山と雪山しか登らない私たちは、そんな高い場所にツツジが咲くなんて知らなかった。
ここで嫁さんのテンションが一気に上昇。
「ほら、あそこにも、あそこにも!」
登山道沿いには少ないが、20m間隔くらいでムラサキに囲まれていた。
もしかして、今が見頃?
まだ蕾の木も多い。
千葉県から1か月遅れて春を迎えたようだ。

スタートして25分、660mでいったん森を抜けた。
前を歩く嫁さんに声をかける。
「後ろを向いてみな!」


「うっわー、大~きいっ!」
左右にゆうたりとすそ野を伸ばした富士山がたたずんでいた。
その鮮明度は、すっきりくっきり4K画質。


右側には、うっすら南アルプスの山々も望める。
天気予報は、良いほうに外れたようだ。
もう頂上まで待てない。
泰楽の撮影会を開始した。


そこから再び森に入って抜けると、ぶわっと視界が広がった。
これだ、これ。
待っていた障害物なしの稜線だ。

ただし、想像していたのは、山頂まで一直線につながる左右が切れ落ちた稜線。
だが、こちらは青々とした草原が上下しており、所々に巨岩が飾られていた。
まるで手入れの行き届いた日本庭園だ。
「本当に自然がつくったの?」と瞬きを繰り返してしまうほどの造形美だった。
規模感は期待したほどではなかったが、これはこれでいい。

ここまでたった850m、40分。
足の速い人なら20分だろう。
なんてコスパがいいのでしょう。

さて、ここからがメインイベント。
この草原の右側にある小ピークに向かう。
100m進むと足元が白砂に変わった。


白谷小丸(標高1890m)ピークだ。
ここで嫁さんのテンションがピークに。
「なっなにここ!? 地面がいきなり真っ白。天空のビーチじゃん。日向山(南アルプス)みたい!」
「右を向いてみな!」
「うっわ~、ダメだこりゃ。もう今日はここだけでいいわ!」
腰を抜かした視線の先は富士山先生


白砂、岩、日本一の霊峰。
この神がかった組み合わせで金縛り状態に。
無人、絶景、動けないーー。

スタートから1.2㎞、50分(かなり遅いです)。
ここは今回のコースで唯一の360度の大展望だ。


我々のテンションが上がれば、泰楽のバイブスも急上昇。
嫁さんと歓喜のジャンプを繰り返す。

彼女が汗だくになっても、まだ足りない。
今度は私に「この木を投げて!」とバットのような長さの棒をくわえてきた。
運よく視界には誰もいない。
神山に向かって木棒を空矢のごとく放った。
同じく矢のように追いかかる泰楽。


普段は無表情の泰楽。
だが、お気に入りのおもちゃにかかわると人格(犬格)が変わる。
ニコニコで戻ってきて「もう1回!」と頭を振って、私の太ももを棒でバシバシ叩く。
「痛い!痛い! この野郎~!!」
結局5回以上投げた。


泰楽がやっと落ち着いたので、まったりとおやつタイム。
泰楽には犬用ジャーキーをあげた。
「次はデザートください」
と私のようかんをガン見。
絶対にあげたくないので、木の棒を渡す。
一瞬「おっ、おもちゃ!」と反応するが――。

富士山を眺めていると、雲海が手前を悠々と流れていった。
彼らが乗り越えている山々は、標高1500m以上だろう。
霊峰、デカすぎる――。
結局、誰も来なかったので30分も遊んでしまった。


さて、次は本日の最高峰である白谷ノ丸(1920m)へ。
白谷小丸からの移動距離わずか150m。
ここは180度の展望だが、高くなった分、富士山の眺めは良かった。

Labeled by PeakFinder

また、山頂の右側へ行くと、八ヶ岳と金峰山が霞がかった姿を見せてくれた。
でも、地面は土なので雰囲気は白谷小丸の方が断然いい。


白谷ノ丸でUターンし、ハマイバ丸へ向かう。
この新緑の稜線、たまらん――。

帰りもミツバツツジのムラサキがまぶしい。
この山のツツジはこの種オンリーのようだ。
高山のピンっと締まった空気にこの色合いが似合う。

ツピー、ツピー、ツピー!
今度はシジュウカラの合唱。
目が潤う。心が浄化されていく~。


30分で湯ノ沢峠まで下山。
立ち止まることなく反対のハマイバ丸方面へ。

ここから傾斜が一転。
ずっとハイキングコースのような勾配だ。
スキー場に例えたら初級者コース以下。
雪が積もってもたぶん滑れない。


約200mでゲートが登場。
中に入ると、自然保護のためにコースがロープで仕切られていた。
犬連れの場合、ここから先は伸縮リードだと難しいだろう。


ゲートに入った途端、が左から右へ流れてきた。
時刻は12時過ぎ。
天気予報が当たってしまった。
あっという間に視界10mに。
大草原に濃い霧。
「あなたの知らない世界」の世界。
白い浴衣の女性が立っていたら悲鳴を上げるシチュエーションだ。


だが本来は、期待していた開放的な稜線歩きができる場所のはず。
きょろきょろしていたら、「湯の沢峠のお花畑」という看板があった。
背後には枯草が広がっている。
見頃は夏のようだ。
いくら2000m近い場所でも真夏は泰楽が嫌がるだろう。


5月下旬のお花畑は、ヒメシャラ↑とヘビイチゴの花がぽつぽつという感じだった。


それよりも印象深かったのは、お花畑と交互に登場する森の中。
このような登山道の多くは、地面に日が当たらず土がむき出しになっている。
だが、ここは広葉樹林だからか、日が当たって青々とした芝のような草が覆っていた。
なんて清々しいのだろう。
こちらも手入れの行き届いた庭園のようだった。


また、意外にもカエデ(もみじ)が多い。
真っ赤になるイロハモミジではなく、幅広タイプがほとんどなので、おそらく黄色系。
だが、視界のすべてが紅葉スポットになる場所もあった。
これは秋も期待できるかもしれない。


新たな発見に胸を躍らせながら途中の大蔵高山(1773m)に到着。
ここは湯ノ沢峠から先でのベストビューポイント。
富士山を含む360度の展望を楽しめるはず。
ところが御覧のとおり360度真っ白。
登頂記録の写真だけ撮って、とっとと先に進む。


ここからしばらくは富士山を眺めながらお花畑を歩けるらしい。
でも、富士山どころか10m先も見えないありさま。

それでもこの山のサービス精神は立派だった。
100m進むと再度森の中へ。


ここで迎えてくれたのは、ミツバツツジの群生だ。
明らかに白谷ノ丸方面より多い。

左が東斜面、右が西斜面になるのだが、右はツツジだらけ。
斜面の奥の奥まで目が覚めるようなムラサキが続いている。


しかも一本一本の花の密度が濃い!
元気いっぱいのソメイヨシノ並みに咲き誇っていた。
まるで南国に咲くブーゲンビリアのようだった。

残念なのは咲いているのがコース沿いではないこと。
それでも、嫁さんも私も「ラッキー! ラッキー!」連呼して歩いた。


しかしながら、周囲の霧は容赦なく濃くなっていく。
ラスト600mで再びゲートが登場。
通過すると、やはり真っ白な世界が広がっていた。

そもそもハマイバ丸の山頂は、樹木に囲まれているらしい。
この状況で無理して行くこともないだろう。
嫁さんにそのことを話すと大賛成とのこと。
ここでUターン決定! 

どうせ眺望がないのだから、適当なところでランチにしようと話していたら、いつの間にか大蔵高丸まで戻ってきてしまった。
ふと富士山がありそうな方面に目をやる。
す~っと流れていく霧。
霞の中から、もわっと滑らかな二等辺三角形のシルエットが浮き出てくる――。

「ふっ富士山だ!」
叫んで嫁さんたちを振り返る。
立ち止まる3人。
すると、するすると霧が消えていくではないか!


待つこと20秒。
ついに、すっきり、くっきりの富士山に再会できた! 


午前中には見えなかった、手前の三ツ峠山の電波塔もはっきり見える。
むしろ午前中より鮮明画質!?


大至急、食卓を整備。


振り返れば、午前中に登った白谷ノ丸白谷小丸もはっきり確認できた。

そんなこともあって大騒ぎで50分も居座ってしまった。
片づけを開始すると、タイミングを合わせたように霊峰は去っていった。
ありがとうございました!

大蔵高丸からの下山は、ノンストップで30分。
トータル4時間56分・6.85㎞の山行でした。

そもそも視界が突き抜けた稜線と富士山を期待した白谷ノ丸とハマイバ丸。
だが登山道自体も楽しい
とにかくツツジが綺麗。
標高がそこそこ高いので、湿気が少なくて気持ちがいい。
おまけに天空のビーチ(白砂)まである。
もしかしたら、ベストシーズンに登ったのかもしれない。

今まで大平山や竜ヶ岳など、ド迫力の富士山を眺める山はたくさん登ってきた。
だが、これらの多くは、富士山の眺めは素晴らしいが、登山道が単調だったりする。
しかし、ここは富士山も登山道も、かなりレベルが高い。
もしかしたら、富士山を眺める山としては、過去イチかもしれない。

ネックは短距離コースをカバーするためにヘンテコなピストンになることと、高速のインターから登山口までが遠いということだろう。
それでも、ぜひ紅葉の時期も行ってみたいと思わせる山だった。
意外な穴場を見つけられて本当にラッキーでした。

なお、傾斜が緩いハマイバ丸(行ってないけど)までのピストンなら登山初心者にもおすすめできると思います。

下山後は、通り道沿いの「やまと天目山温泉」(520円)に浸かって帰りました。
ぬるめだけど、3つある内風呂の全部がジェットバスなので、せっかちな私でもゆっくり。
露天風呂の前のもみじの森も良かった。

コメント

  1. 大須賀孝之 より:

    初めまして、大須賀 孝之と申します。24日、白谷ノ丸、大蔵高丸に行かれて良かったですね。天気が良ければハマイバまで行かれて是非ツツジの大株をご覧頂ければと思いました。私はハマイバに10年ぐらいツツジの時期に通っていますが、満足した写真は2回しか撮れていません。お暇な時にご覧頂ければ幸いです、2023年撮影のハマイバのツツジと富士山です。https://zuiso.net/topic/detail/101773

    • zenta1_admin より:

      ブログを拝見しました。ハマイバ丸の山頂には、こんなに綺麗なツツジが咲いているんですか!? 絶対に来年も行こうを決意しました。情報ありがとうございます!