犬と一緒に登山をする6つ理由・メリットと注意点

一緒に登ることでペット以上の存在になる!

「登山なんて絶対しない!」
「登り坂をわざわざ歩くなんて体育会系バカじゃないんだからやるはずないでしょ!」
40歳を過ぎるまでずっとそう考えていた。

だが、気づくともう10年も犬と一緒に山を登っている。
疲れることが大嫌いな私が、なぜ山に登るのか。
その理由を考えたら次の6つが思い浮かんだ。

1.犬が喜ぶ
犬と山に登るようになったきっかけは、当時の愛犬(バーニーズマウンテンドッグ)仲間のSNS投稿だった。
犬と一緒に雪が積もる入笠山(長野県)に登る様子がアップされていた。
寒さをまったく気にせず、雪だらけになってはしゃぐ姿を見て、単純に「羨ましい!」「連れて行ってあげたい!」と感じたのだ。

早速、先代犬を入笠山へ連れて行くと、すぐにテンションが上がっていることに気がついた。
このときすでに8歳で引っ張り癖は治っていた。
だが、雪上を歩きはじめると先に行きたがり、「早く行こうよ! 早く行こうよ!」と何度も振り返ってきたのだ。
その表情がニッコニコの笑顔。
それだけで心がほんわかした。


入笠山(長野県)
下山時はさらにテンションアップ。
先代犬は誰もいない雪原を転げ回って大はしゃぎだった。
バーニーズマウンテンドッグとしては寿命といわれる8歳にもかかわらず、ウサギのように飛び跳ねて私を追いかけてきたのだ。
愛犬が楽しければ、飼い主も楽しい。
愛犬と価値観を共有する喜びを知った。

2.仲間と登る場合とソロで登る場合のいいとこ取り
仲間との登山はさびしくないし、情報交換の機会にもなる。
だが、スケージュールや歩くペースなどを合わせなければならない。
一方でソロでの登山はスケジュールや歩くペースは自由に決められるが、ひとりぼっちで登るのはさびしいと感じる人も少なくないだろう。
どちらも一長一短だ。
そこで犬連れ登山。
愛犬と一緒に登ればさびしくない。


大力山(新潟県)
私は登山中ずっと愛犬(泰楽・ゴールデンドゥードル)に話しかけている。
変な人?
でも人が多い山にはほとんど行かないから気にしない。
それにさびしさが紛れるだけでなく、お互いのことを理解するいい機会になっていると思う。
泰楽は私の言葉を理解しようとしてるようだし、私はそのときの反応などから彼の気持ちをより深く理解できるようになった気がする。

それに犬は「きょうは部活があるから」などと言って誘いを断ることはない。
また、歩くペースは合わせてくれるし、途中で引き返すことになっても文句を言わない。
行き先も出発時間も自由に決めさせてくれる。

3.共同作業をやり遂げる達成感を味わえる
登山に辛さは付き物だ。
だから頂上にたどり着いたときの景色がより美しく見えるし、下山後のビールがより旨くなる。
犬だって登るのが辛いときはあるはずだ。
だが、犬の本能が「家族の喜びが自分の喜び」(または「離れたら生きていけない!」)なので必死について来る。


浜石岳(静岡県)
そしてやっと登頂したとき、犬は飼い主と一緒に喜んでくれる。
共に苦労し、共に達成感を分かち合う。
愛犬との日常生活で、そんな場面があるだろうか。
この一生懸命さと素直さから「やっぱりコイツかわいい!」と再認識するのです。

4.ペットから対等な「相棒」に進化する
登山時の話し相手になってくれる。これだけですでにペット以上の存在だ。
さらに泰楽は登山に慣れてくると家族に対して気遣いを見せるようになった。


大菩薩嶺(山梨県)
4歳を過ぎた辺りから私と嫁さんのどちらかが遅れると途中で待つようになったのだ。
それでも遅れるとUターンして太ももを鼻でツンツンし、「大丈夫?」と聞いてくる。
(他人の気配があるときは当然リードを付けています)

先代犬(バーニーズマウンテンドッグ)の場合は、傾斜が急になると先頭を歩く人の真後ろにぴったりついて来た。
よくかかとを踏まれて「絶対に家族から離れません!」という気持ちがめらめらしていた。
このような愛犬の家族を大事にする気持ちに気づいたとき、ペットから「相棒」「仲間」「親友」といった対等な立場に進化していった。

5.絆が深まる
日常生活で愛犬と片時も離れず7~8時間一緒にいる機会はほとんどないはずだ。
登山はその機会となる。
しかも苦労と楽しさを一緒に味わうのだ。
お互いがいるから辛い急登を乗り越えられるし、楽しさや感動は倍増する。


西吾妻山(福島県)
「泰楽っち、ド迫力のスノーモンスターだな!」


「泰楽っち、雲海がきれいだなー!」
心を揺さぶられる経験を一緒に積み重ねて、どんどん絆が深くなる。

6.愚痴を聞いてもらえる
山はストレス発散の場でもある。
滝のように汗をかき、山頂からド級の絶景を拝めれば嫌なことなんてすっ飛ぶ。
そう想像する人も少なくないだろう。
確かに急登に挑んでいたり、大展望を目の当たりにしている瞬間は忘れているケースが多い。
また、下山後もいくらか気持ちが軽くなっているはずだ。
だがゼロになっていることはほとんどないだろう。
だって問題が解決しているわけではないのだから。

だが愛犬に愚痴を聞いてもらうと問題解決に一歩近づける。
登山中ならば時間を気にせずたっぷり聞いてもらえる。

配偶者や親友などに聞いてもらえる人もいるだろう。
しかし、100%打ち明けている人はどれだけいるだろうか。
私なら
「そこまで悩んでいるの!?」
と深刻に心配されたり、
「いい加減その話はうんざりなんだよ!」
と疎まれたりするのが嫌なので手加減してしまう。
嫁さん相手でもマックス80%かな。
キャリアカウンセラーの勉強をしているときは、「恥ずかしいので愚痴は誰に対しても絶対に口にしない」という人もいた。

しかし、愛犬が相手ならば思う存分、なんなら実際よりも大袈裟にぶちまけられる。
それだけで単純に登るより気分がスッキリする。

さらに100%吐き出すことで
「いやいや、そこまでは酷くないでしょ」
「そんなに人の悪口を言って俺って器が小さいな」
と自分自身を客観視することもできる。
なのでより解決に近づけるのだ。


登山中の犬は、こんな笑顔で無限に愚痴を聞いてくれる。
親友以上の親友だ。

以上が犬と一緒に登山をする6つ理由・メリットだ。

ただし、このような犬連れ登山を楽しむためには注意点もある。
それはマナーを守ることだ。

マナーに関してもっとも問題になるのは排泄物の放置だろう。
私は排泄物放置のおもな原因は、飼い主がアンポンタン(そもそも拾う気がない)の次に伸縮リードだと思っている。
犬はわずか3秒くらいの間で排泄していることもある。
我慢できなきゃ歩いていたってする。
だから伸縮リードをぐいーっと伸ばしている飼い主は、犬の排泄に気づいていないケースも少なくないはずだ。

そもそも伸縮リードはマナーとしてどうなんだろう。
細い糸でつながれた犬が、突然吠えながら他の登山者に突進していく場面を何度も見ている。
これが崖っぷちの登山道だったらと思うとぞっとする。

そんな飼い主に限って「うちの子は小さいし、かわいいから怖がる方が変」という態度だ。
でも小さかろうが丸かろうが、怖い人には怖い。

なのでマナーを意識する際は、世の中には犬嫌いの人がいる、ということを忘れないようにしたい。
愛玩動物飼養管理士の資格を取得する際、犬嫌いの人が意外に多いことを知った。
内閣府「動物愛護に関する世論調査」(2010年)で、「ペットを飼うのが好きなほうか」という質問に対し、「好き」と答えた人は72.5%、「嫌い」と答えた人は25.1%だった。

また「東京都における犬及び猫の飼育実態調査」によると、「犬が嫌い」と答えた人は5.4%で、「好きでも嫌いでもない」の26.4%と合わせると3割を超える。
以上のことから私は「山頂に10人いたら3人は犬嫌い」と思うようにしている。

実際に「こっちは犬が嫌いなんだよ!」と怒鳴られたことがあるし、怖いを通り越してカチンコチンに硬直した人にも会ったこともある。

楽しく犬連れ登山を続けたいなら、犬嫌いの人から「そこまでするんだ。だったら文句は言えないな」と思ってもらえるくらいマナー遵守を貫くしかない。

だからしつけにこだわり、泰楽にはウンチ袋を背負わせ、すれ違う人に「かわいいぃ~!」と黄色い声を投げかけられても自分の身体で犬との間に壁をつくって、登山ルートを空けるようにしている。
それでも触りたい、写真を撮りたい、と言われれば、泰楽に聞いたうえで喜んで応じている。

そんなことを考えると、犬連れ登山も免許制にならないかと思う。
飼い主の講習受講、犬自体のしつけチェックなどで免許を交付し、登れる山を全国的に制限するのだ。
無免許で登ったらびっくりするくらい多額の罰金を納める。
もちろん制限には生態系への影響なども含まれるし、日常のお散歩コースとなる住宅地近くの低山などは対象外。
こうすれば、社会全体の犬のしつけに対する関心度も上がると思うんだけどなぁ。

20年ほど前だが、嫁さんがドイツを旅行した。
その際、都会のど真ん中の代々木公園のようなところへ行ったのだが、そこで散歩するほとんどの犬はノーリードだったそうだ。
そのすべての子が飼い主から離れずに歩いていたらしい。
ヨーロッパでは「子どもと犬のしつけはドイツ人にさせろ」と言われているそうだ。
日本も「犬はしつけができて当たり前」「だからどこへでも連れて行ける」という社会になってほしい。

そのためのひとつの案が、犬連れ登山の免許制だけど、講習や無免許の取り締まりなどのお金もかかるし、無理だろうなぁ。

 

 

 

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