リードを絶対に他人に持たせない犬でも、5分で子どもにも持たせるようになる方法

要するに持つ人の心構えを見抜いていた!?

2年前、「泰楽が子どもにリードを持たせない」という記事を書いた。

リードを持たせなかったり、引っ張ったりするのは、その人が犬に信頼されていない証拠らしい、という内容だ。
つまり、散歩は犬との関係を知るバロメーターなのだ。
https://large-dog.iehikaku.com/archives/4373


現在も泰楽は他人にリードを持たせない。
持とうとすると、子どもだろうが格闘家だろうが全力で体当たりをして阻止を試みる。

そんなある日、久しぶりに親戚が集まって宴会が開催された。
メンバーは嫁さんの両親と義理妹弟の家族だ。


泰楽は、とっくに親戚の一員となっている。
宴がぐんぐん盛り上がっていく中、物静かな甥っ子(13歳)にずっと甘えていた。

そして、甥っ子次男(10歳)から毎度おなじみの要求が発せられた。

「泰楽と散歩に行っていい?」

2年前、甥っ子次男は泰楽にリードを持つことを断固拒否されている。

動画のように完膚無きまで徹底的に拒否された。
それなのにまた挑戦しようというのか?

「あれからボクも成長したよ。今日は絶対に散歩できると思う

正直に言うと、甥っ子次男が泰楽に拒否されている様子は見ていておもしろい
お互い未熟なものの本気で知力・体力を出し合っているからだ。
小学生のスポーツの試合を見学している感覚に近いかもしれない。

だが、大人の私が異種格闘技の試合を率先して支援するわけにはいかない。
そっと周りの空気を確かめる。
甥っ子長男(13歳)
「弟が行くなら付き合うかぁ~」という兄らしい目線を私に送っている。

姪っ子(10歳):
「私からは恥ずかしくて言い出せなかった。行こう!行こう!」と目がらんらん

最後に甥っ子父(義弟)と視線を合わせる。
彼が口を開いた。
「お義兄さん、ボクも一緒に行きますよ!」

こうなったら仕方がない。
付き合ってあげよう!

玄関を出ると、早速甥っ子次男がリードを持ちたがった。
その様子がこちら↓


相変わらずの断固拒否。
むしろ容赦がなくなっている気がする。

「いやいや、今日はじめてだからだよ。もう少し経てば持たせてくれるよ!」
子どもはいつも前向きだ。
その言葉に期待しつつ、私と一緒にリードを持って近くの公園へ向かった。
その間も泰楽は、リードを持つ甥っ子次男の手元をチラチラ見ている。

公園の広場に到着。
「さぁ~、これで泰楽と思い切り遊べるね。とりあえずリードを一人で持たせて!」
甥っ子次男の瞳に不安の色は一切ない。
一方で姪っ子を含め、我々の目には心配の色しかない。

とはいえ、泰楽は噛む犬ではない。
多少体当たりしても、スッテンコロリンくらいで済むだろう。
そっとリードから手を離す――。

その瞬間、泰楽が目を合わせてきた(2秒)。
「いいんですね?」
と聞かれた気がする。

良くないんですけど、と思ったがもう遅い。
大至急、高跳びの選手のように甥っ子次男に飛びかかった。
彼は予想通りスッテンコロリン。
土ぼこりの上ででんぐり返しを繰り返す。
電車で帰るんだよね……

すかさず甥っ子長男がリードを拾い上げた。
「よくも弟を転がしたな!」
リードを握りしめる拳に気合があふれている。

泰楽はその拳に向かってドロップキック!
甥っ子長男も土ぼこりの上ででんぐり返し――

その光景を目の当たりにして、段々とムカムカしてきた。
みんな仲良くなりたいと努力しているのに、なんだその自分勝手な態度は!

再度、リードを拾い上げた甥っ子長男に向かって言い切った。
「今度、泰楽が飛びあがったら、リードを思い切り下に引っ張って」

長男が頷く。
だが遠慮があって力が入らないようだ。

「もっと強くて大丈夫だから!」
1回目より2回目、2回目より3回目。
徐々に手加減が無くなっていくのが泰楽の「キョトン」とした目つきで分かる。

5~6回繰り返した後、私は飛び上がったタイミングに叫んだ。
「泰楽ダメっ!」

泰楽はぴくっと身体を反応させてオスワリをした。
イケるか!?

リードを持つ長男が歩きはじめる。
1歩、2歩、3歩――

ジャーンプっ!

こうなったら意地だ。
泰楽がジャンプするたびに、しつこく「泰楽ダメっ!」と叫んだ。
続けること5~6回だった思う。


気が付くと普通に散歩しているではないか!
長男が走ると、泰楽は同じペースでついて行く。
リードを下に引っ張りはじめて10分くらい。
こんなに簡単なことだったの!?

その様子に次男は狂喜乱舞しながら長男を追いかける。
「早く持たせて、早く持たせて~!」

鼻をぐい~んっと伸ばして戻ってきた長男は、私の前でリードを次男に渡す。
「どういうことでしょ?」と彼と私を交互に見る泰楽。

「歩いてみて」
次男が一歩踏み出すと同時に泰楽の身体が沈んだ。
ジャンプの瞬間に「下に引っ張れ!」と叫ぶ。
ぐんっと伸びるリード。
だが10歳の力は弱い。
ジャンプをするのは留まったものの、ついて行く気はこれっぽっちもなさそうだ。
オスワリをして動かない。


「リードを強く引っ張って歩いていいよ」
言われたとおりにする次男。
父親(義弟)が心配して寄り添う。

そんな事お構いなしに泰楽はジャ~ンプ
そのたびに「泰楽ダメっ!」を繰り返す。
同時に次男には下にリードを思い切り引っ張ってもらう。

続けること5分。
その様子がこれだ↓

まるで一緒に育ったように仲良く歩いている。
5分前の断固拒否は何だったの!?


その後、姪っ子にも同じ方法でリードを持ってもらったら、次男よりも短い時間でスイスイ散歩ができるようになった。

短時間の理由は、リードを扱う力強さだと思う。
姪っ子は、三人の中で一番容赦なく引っ張っていた


そして帰りは子どもたちが交代でリードを持って歩いたのでした。

ところで、なぜ泰楽は子どもにリードを持たせるようになっただろう?
やったことは次の2つ。
1.ジャンプする瞬間にリードを下に引っ張った
2.同時に私が「泰楽ダメ」と叫んだ

ここで前回紹介したドッグトレーナーの言葉を思い出したい。
「散歩と犬の群れ行動は同じです。
散歩中は緊張感を持って他の犬の臭いや環境の変化を確認する。
単なる運動や遊びではなく、生活圏を見回りする行動なのです。
リードを持っている人は、そんな社会活動を任せる人なので信頼できることが前提です。
家族の中では親のような存在。
だからリードを持つと、その人と犬の関係が分かります。
いつもおやつをくれるのでべったりしていたお父さんでも、
散歩に連れ出すと興奮するようでは信頼されているとはいえません」

犬にとってリードを任せるということは、命を預けるようなものだ。
だから慎重派の泰楽は家族以外に持たせないのだろう。

ところが今回は、子どもたちがリードを思い切り引っ張ることで泰楽は彼らの気合いを感じ取ることができた
同時に私が「ダメ」と指示を出すことで、事態に対してより集中できたのかもしれない。
その結果、
「そこまでやる気があるならお任せしますよ」(信頼します)
となったのだと思う。
なんて短時間でお任せするんだ!、と感じたが、そこは泰楽はスーパー素直ですから――。

だが、大きな疑問も残っている。
先代犬(バーニーズマウンテンドッグ)は、最初から誰にでもリードを持たせた。
真っ赤な他人でもだ。
なのに3歳になるまで私を含めて誰の言うことも聞かなかった。
誰がリードを持っても、壊れたダンプカーのように引っ張って引っ張って引っ張りまくる。
あまりに引っ張って友人の奥さんを脱臼させてしまうこともあった――。
先代犬の引っ張り癖についてはこちら↓
https://large-dog.iehikaku.com/archives/4096

信頼していなくてもリードを持たせることはあるの??
そこで仮説を立てた。
リードを持たせる犬には2つのタイプがあると思う。
1.信頼するまで持たせないタイプ=泰楽
2.自分を信じて信頼していなくても持たせるタイプ=先代犬

持つ人を信頼しないとリードを持たせないタイプは、持たせるようになってからは従順だ。
リードを引っ張らないし、行き先も人任せ。

一方で持つ人を信頼していないなのにリードを持たせるタイプは、人の存在を重視していない。
誰がリードを持とうが関係なく、自分の好きなように歩く。
先代犬は自分に自信があったので、飼い主のいうことを聞く気がなかったのだろう。

ただし、信頼していなくても持たせるタイプにも二通りあると思う。
1.自分に自信があって自由に生きたいタイプ
2.自分に自信がないので常に怯えているタイプ

前者が先代犬だ。
自分に自信あるから最初から吠えることはほとんどなかったし、最期まで自由を求めていた。
ただし、大自然での放置プレイなどを経験したことで「飼い主がいないと生きていけない!」という考えが叩き込まれ、5歳以降は家族ベッタリのペットを超えるパートナーとなった。

後者は毎日大変だ。
毎日「誰も守ってくれない」と思っているので、ちょっとしたことで吠える、怯える、威嚇する。
だから散布中は、誰がリードを持とうが先に進んで危険物探しのパトロールを欠かさない。
逆に心配&飼い主が信頼できない、でリードを付けて歩けない犬もいるはずだ。

いずれにしても
散歩は犬との関係を知るバロメーター
ということは間違いないと思う。

自由を愛する先代犬も、3歳を過ぎてからは散歩中に私と頻繁に目を合わせ、リードを引っ張ることはなくなった。

つまり、リードを持たせて行き先をこちらの都合に合わせてくれるようになったら、信頼されているんだな、と思っていいような気がする。

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