犬連れ登山「ジャンダルムと真っ赤な紅葉に感動!」生瀬富士・月居山(茨城県)

アップダウンは多いが登る価値は十分にあり!
てんくら予報:快晴・風速3m

「生瀬富士の紅葉は血の色の如く赤い」
数年前のヤマレコでこのような記述を見つけた。
私にとって血の如くとは、鮮やかでフェラーリのような赤ということだ。
ぜひ見たい!

調べると生瀬富士(茨城県)の見どころは、紅葉だけではなかった。
山頂近くにはゴツゴツの岩が連なる痩せ尾根「ジャンダルム」があり、日本三名爆のひとつ「袋田の滝」を見下ろす展望台もあるらしい。
さらに袋田の滝を囲む紅葉も、それはそれは美しいとのこと。
なお、紅葉の実力は、生瀬富士よりも近くの月居山の方が高い。
だから多くの人は二座を縦走するそうだ。

ずいぶんと豪華仕様ではないか!
では、いつ行く?

例年では11月中旬に紅葉の見頃を迎える。
そこで11月に入ってからは毎日ヤマップ・ヤマレコの登山記録を確認。
すると11月22日の時点でも、まだ青々している……。
2024年は暑い日が続いたためだ。

一方で袋田の滝周辺は、落葉開始の便りが届いた。
写真で確認したところ、袋田の紅葉は赤系ではなく錦系、つまり色とりどり系だ。
個人的には赤系絶頂を待ちたい――。

そこで嫁さんから鶴の一声。
「絶対に袋田の滝の紅葉が見たい。月居山より見たい」
登山日は11月23日に決まった。


7時40分、町営無料第2駐車場(223台)に到着。
この時点で8割埋まっていた。
より登山口に近い第1駐車場(37台)に停めたかったが、おそらく満車なのでここを利用した。
広くで結構立派なトイレもあった。


7時55分、登山開始。
標高100m、気温4℃。
ちょっぴりのどが痛い体調なので最初から中綿ジャケットを着る。
念のため登山口を通り過ぎて第1駐車場の様子を確認。
案の定満車だった。
それに第1から登山口までは約20m。第2からは約80m。ならば確実に停められる第2で正解!


しばらく住宅地を歩いてから登山道に入る。
最初は杉と広葉樹の混合林。
樹種はナラ系が7割といったところで多くが黄色に色づいていた。


足元はドロドロ。
雨が降ったのは一昨日のはずなのに乾くのが遅いようだ。

スタートして2km・45分。
樹種が広葉樹の森になった。
日射しが足元まで届く。落ち葉の絨毯の陰影がはっきりして秋が深まっていることを知らせてくれた。
ここまでずっと緩やかな傾斜だったが、木々によって風を遮られているので暑くなってきた。
中綿ジャケットを脱ぐ。


するとタイミングよく2.2㎞・1時間でロープ場登場。
その後もちょくちょくロープのアシストにお世話になった。
まぁ、小学校低学年でも登れるレベルだけど。

そんな登りを繰り返していると、いつの間にか右側がカエデ、左側が杉の道になっていた。
カエデはまだ色づいていないが、そこから透けて見える遠くの山肌はモザイク模様。
周囲に人影無し。
聞こえるのはわが家の足音のみ。
癒される。
そこで足元がぬかるんでいないことにも気づく。


2.3km・1時間7分経過。
右側がゴツゴツの岩地帯になった。
数十m進むと傾斜45度の岩壁。
高さ20m近い。
途中でソロ登山者が「どうすればいいの?」とつぶやきつつアウアウしている。
嫁さんと出会って約30年。どう考えても私とは恐怖心の回路が違う彼女は、手足を巧みに使ってさっと駆け上がり、ソロ登山者の真下で静止。
私は「焦らなくていいですよ~。その右側の岩は掴めませんか?」と一歩一歩提案して進んだ。
泰楽は私の後ろで牛歩戦術。

そして最後と思われる岩を掴んで、よっこらしょっ!
いよいよジャンダルム登場か!? 
とキラキラの眼差しで左右を確認。

すると、いきなり人がいるいる。
もしかして、この岩壁を回避するコースがあったのか?
とにかく、皆さん右から左へとトラバースしている。

では左にはなにがあるの?
目を向けた瞬間、思わず「あっ!」と口に出てしまった。
ほぼ垂直の壁とロープではないか。
これは握力が使えない泰楽には無理かもしれない。
今度は私がアウアウ……。

その表情を察したのか、ひとりのお姉さんが声をかけてくれた。
「あそこのロープは奥へと斜めに登れるので、それほど危険ではないですよ。それよりジャンダルムの後はどこへ行きますか? 袋田の滝? ならばここまで戻って来てから滝方面へ下るロープ場の方がきついかもしれません」

大変ありがたいお言葉。
と、言うことはとにかくジャンダルムまでは行けるということか。


たしかに左側のロープへ行ってみると、垂直に上がるのではなく、足場も意外に広かったので、ロープを掴めない泰楽でもニコニコしながら通過できた。


そして眼前に現れたのがこれだ! 
茨城のジャンダルム。

写真や動画で何度も見てきたが、本物は期待以上のスケール感。
びよーんと伸びていゴツゴツの痩せ尾根は、まるで天高く飛びめぐる大な龍の背のようだ。
ウロコ一つひとつまでリアルに再現されている。

ヤマレコやヤマップの記録のなかには「怖かった」「強風が吹いていたので先端まで行くのを諦めた」といった記述もある。
このときの風速は4~5m。
ときどき落葉した細枝がぐわんぐわんと揺れている。
だが、身体が押される感覚はない。
4本足の泰楽なら、より安全だろう。
無理そうならUターンすればいい。

先を行く人たちをよく見ると、途中で問題なくすれ違っている。
「あそこを歩けるのか!」
胸が高鳴る。

でも慎重に。
泰楽のリードを握りしめ、第一歩を踏み出した。

すると意外に歩きやすいではないですか。
ほとんどの道程が幅2mくらいある。
大型犬でも引っ張り癖がなければ問題なく歩ける。

雲一つない快晴。
周りの様子は、すでに葉がほとんどない冬景色だが、遠くの山肌はどこもカラフルなモザイク模様だ。
正面に見据えるジャンダルムの先端から、ときどきふっと風が吹いてきて身体を突き抜ける。
背中の汗がす~っと乾いていく。
怖いどころか心地いい! 


2.3km・1時間20分でジャンダルムの先端に到着! 


この奥にはなにもない。

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南側にはこのエリアを代表する山岳である奥久慈男体山。

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北側には茨城県の最高峰八溝山を見渡せた。
いや~、雄大、爽快、また来たい。
紅葉がなくてもこれだけで大満足。


ただ、大きなネックもあった。
それはジャンダルムまでの痩せ尾根が大渋滞することだ。
なので先端の撮影タイムは順番待ち。
とはいえ、待ち時間は数分だし、皆さんお互い様ということは理解しているので、私たちがいたときは終始和やかな雰囲気だった。
けれども犬連れの場合は、やはり引っ張り癖や吠え癖がある子は避けた方が無難だと思う。

嫁さんと泰楽に「来てよかったね!」と話しながら、袋田の滝方面へ向かう。
すると、すぐに再度人だかりが。
「なにかあるのかな」と奥へ進む。
その先にぽつんと小さな標識があった。


なんとそこが生瀬富士の山頂だったのだ!
てっきりジャンダルムが山頂だと思っていた。


しかもそこには今回最大の難関が待っていた。
山頂から先は急傾斜のロープ場で、ジャンダルム以上の大渋滞となっていたのだ。
とにかく人のいないところを狙って泰楽と遊んできた私としては、富士山登山以来の経験。
大人しく青空を眺めながら牛歩戦術にペースを合わせた。


登山は苦もあれば楽もある。
下り切ったあとは、ついに真っ赤に色づいた紅葉が待っていた。
これを眺めに来たのです!


まだ5分咲きといったところだったが、結局、これが今回最大の真っ赤地帯だった。
1週間前の石尊山(群馬県)は、異常気象のせいか例年より少しくすんだ赤だった↓
https://large-dog.iehikaku.com/archives/8462
だが、ここの赤は理想の紅。
バブル期のルージュのように艶めかしかった。

しかしながら、同時に「苦」も登場。
アップダウンが多いのです。
トータル6回くらい。
それぞれがエグイ傾斜でないから紅葉でごまかせたけど。

そんなアップダウンと紅葉に翻弄されつつ3.6㎞を歩いたとき、またもや人だかりができていた。
皆さん右側の崖の下を眺めている。
では私たちも――。


ひょいと首を伸ばした瞬間、
どどどどーっ
頭上からつま先に向かって電撃が走った。

眼下には大きな、大きな滝があった。
落差120m。これは今まで見てきたなかで最大の滝といえるかもしれない。
それが左から右へ「だんっ!だんっ!だんっ!だんっ!」と4段に落ち、存在感をアピールしている。
さらにそのド迫力瀑布を黄色、紅・緑の錦秋が精一杯応援していた。


そこは「袋田の滝」を見下ろす「滝のぞき」と呼ばれる展望台だった。
残念ながら滝の周囲の紅葉は見頃を過ぎて7分咲きといったところだった。
それでも「力強く、美しい滝」のお手本のような風景が眼下に広がっていた。
写真を撮ることも忘れて、ただ数分間ぼっ~と眺める。


はっと我に返り、正面に目をやるときれいな二等辺三角形の山体の後ろに青空が広がっていた。
山肌ははっきりとしたモザイク模様。
空には綿菓子のようなフワフワの雲。
またもやぼっ~。


いかんいかん、と大至急写真を撮り、無理やり先を急ぐ。
しばらくして振り返ると、さっきまでいた滝のぞきが確認できた。
あんな錦秋に囲まれたところにいたのか。


やがて眼下に清流が見えてきた。
袋田の滝の上流部を渡るのだ。


水量が多い日は、無料の長靴レンタルがあるらしい。
この日は少なかったようで、ミドルカットの登山靴であれば問題なく徒渉できた。


川を渡るとすぐに月居山の登山口がある。
周囲は広葉樹林。
すでにほとんど落葉している。
これで頂上の紅葉は、まだなのか?


中程度の傾斜を登りはじめる。
登ったと思ったら、下る。
ここもアップダウンが多い。


そして傾斜が段々ときつくなってきた。
さらに後半は階段も登場。
私の階段嫌い偏差値は70。
つまり学年でもトップクラスに嫌い。

おまけに途中の紅葉はほとんどなし。
徐々にブルーになりつつ、「ここはリピートないかも」と念仏のように唱えはじめる。

最後の階段は100mの下り。
しかも踏板の幅が15cmくらいしかない。
「もう嫌だ!」 


そう胸で叫んだとき「ごぉ~んっ」と鐘の音が響き渡った。
山頂直下にある月居観音堂の鐘の音だ。

どうやら自由につけるらしい。
一度聞こえてきたら、ロックのリズムのようにガンガン聞こえてきた。
一瞬厳かな気持ちになったが風情がない――。


最後に九十九折の登山道を登る。
結局、7回のアップダウンだった。


そして月居山の登山口から50分で登頂!
そこは体育館くらいの面積の広場になっていた。
眺望はゼロ。
では、期待の血の如く紅い紅葉は!? 
南側だけ4部咲き。
その他は2部咲き。
ネット情報のままでした――。
(2024年11月23日現在)

これでは来週でも見頃にはなっていないだろう。
ならば袋田の滝の紅葉に間に合っただけ今回が良かったか。


そう自分に言い聞かせていると、うれしい出会いがあった。
なんとゴールデンドゥードルの女の子がいたのだ。
まだ1歳。飼い主さんは北アルプスもやっつけるベテランで、この子もこれからガンガン登らせるそうだ。

また、わが家と同じ千葉県在住の83歳のおじいちゃんとも登山話で盛り上がった。


もちろん、美しい紅葉もたくさん切り取った。


そんなことをしていたら頂上に1時間30分もいてしまった。
陽が西に傾いている。


下りは半分くらいが落ち葉が積もった舗装道路だった。
今は通行止めになっているようだ。


周囲に人影無し。
なので泰楽と棒投げをして遊びながら下った。

途中で嫁さんがつぶやく。
「ここの帰り道は、ずっとカエデの森だね」 

たしかに目を凝らすと、どの葉っぱもカナダの国旗と同じだ。
暗くうっそうとしているので気づかなかった。
つまり密度が濃い。
ここが全部真っ赤になった景色を想像する。
くらくらくら――。
気絶級は間違いない。
アップダウンの多さは許す!

7時間9分・7.7kmでゴール。
そのうち2時間30分は休憩(撮影+昼食)だった

生瀬富士→月居山コスは、
・ジャンダルムが唯一無二の絶景
・袋田の滝がド迫力
・真っ赤な紅葉の嵐(のはず)
これだけ高レベルの見どころが多い低山は、なかなかない。
楽しさでは妙義山と勝負できるかもしれない。
来年は必ず紅葉のピーク時に行きたい。
嫁さんもそう力強く言っていた。

さぁ、今夜は車中泊して翌朝は、絶景確実の奥久慈男体山に登ろう!

以下、キャンプネタです↓


その日は河原で車中泊。
暗くなる前に根性で目の前に赤い紅葉がある場所を見つけた。


まずは料理中にバーボンのお供となるスモークをつくる。

5時30分には、もう真っ暗。
焦って薪を拾う。
5時50分、宴会開始。
気温10℃。


メインメニューはおでんと純米大吟醸。


デザートはお汁粉。


20時の時点で気温6℃。
焚き火に当たっていても寒い。

20時30分。突然、対岸から「うぎゃ~!」「どどどどど~っ!」「ばっしゃーんっ」と大音量が響く。
イノシシが川に飛び込んだ?
ライトを照らすが光る眼は見えない。
獣ではないのか?
正直怖い。
その正体は、翌朝予想がつく。


代わりに泰楽が警備の目を光らす。

そろそろ寝ようと思っていたら、嫁さんが探検したいという。
彼女はなぜかキャンプをするたびに真っ暗な場所を歩きたがる。
前世は獣?


探検中に夜空を見上げる。
視界全体を覆う星々。
でも何か変……。
目を凝らす。
そして気づく。
一つひとつの星が大きい。
一言でいうと「大味」な星空なのだ。

本当に美しい星空は、目立つ星と星の間を埋めるように塵のような瞬きがある。
それがなかった。
この近くの道路には、オレンジ色の照明が煌々と光っていた。
おそらく、そのせいだろう。


だがその照明がめずらしい景色も見せてくれた。
対岸の山容と夜空をiphoneで撮影したら、星と紅葉をいい具合に切り取ってくれたのだ。


たぶん照明の光がなければ紅葉までは写らなかっただろう。
お腹いっぱい、ほろ酔いで21時14分、就寝。
寒すぎてめずらしく日本酒を残してしまった。
翌朝は奥久慈男体山に登るから、それでよかったかもしれない。

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