コースの半分がずっと紅葉している!
11月16日:てんくらA(終日曇り予報)
昨年より開始した「日帰り石尊山&四万湖の紅葉三昧ツアー」(群馬県)↓。
https://large-dog.iehikaku.com/archives/5491
シーズン最後のカヌーに紅葉登山も組み合わせた、わが家オリジナルのツアーだ。
真っ赤な紅葉の穴場である石尊山のコースタイムは往復3時間25分(4.4㎞)。
絵に描いたようなコバルトブルーで知られる四万湖は、紅葉も美しい。
また、渓流との合流地点まで漕いで往復1時間もかからない。
そして両者の距離はクルマで3分程度だ。
こんなゴールデンコンビ、ほかにある!?
なので毎年恒例の季節行事となっている。
今年は11月1日から臨戦態勢に入った。
ヤマップ、ヤマレコ、インスタ、Xなどを駆使して紅葉の状態をチェック。
「この週末しかない!」と鼻息を荒くしたのが11月16日だった。
とはいえ、天気予報は曇り。
はたして今年は昨年以上の紅葉に巡り合えるのか!?
8時2分、駒岩公民館の駐車場に到着。
メディアによっては5台駐車可能と書いてあるが、アルファードクラスなら4台が限界。
最後の1台として停められた。
8時15分、登山開始(標高552m)。
曇り予報だったが雲多めの青空。
もしかしてラッキー?
気温11℃
昨年は2℃スタートだったので雲泥の差で快適。
石材店の脇を通って登山口に向かう。
200m弱で登山口に入る。
春から初秋はヤマビルの嵐らしいが、このときはしっかり草刈りをされていて被害ゼロ。
しばらく緩やかな傾斜の杉林を歩く。
100mほど進むと、前方から下山者が。
もう下りてきたの!?
一眼レフを2台も首からぶら下げている。
ツワモノに違いない。
「紅葉はどうでしたか?」
「以前行ったときは真っ赤で驚きました。そのインパクトが強すぎたのかもしれませんが、今回はあまり赤くなっていませんでした。時期が早いというより色自体が薄い感じです」
そして標高10m単位で紅葉の状況を説明してくれた。
やはり紅葉マニアだったのだ。
この時期になると毎週、紅葉登山に出掛けているという。
次回登る予定の生瀬富士(茨城県)のことも聞いてみた。
もちろん彼は体験済みだった。
そして石尊山との違いをこう語った。
「真っ赤なカエデの数は石尊山ですね。ここが今まででナンバーワンです。生瀬富士の紅葉は、ほかの樹木も混ざっています。それに樹高もこちらほど高くありません。でも生瀬富士は滝も見えますよね。コースの楽しさならあちらですよ」
スタートして800mで中程度の傾斜の直登が繰り返し登場。
はじめて登山する人と来たら「もう2度と登山なんてしません」と言われそう。
とはいえ、ここも草刈りをしっかりしてあるし、地面がえぐれていないので、経験者ならば安全に歩ける。
スタートして1.1㎞で鳥居が登場。
ここで広葉樹林に切り替わる。
標高700m。昨年は標高850m~950mが紅葉ピークのときに、ここの葉は青々としていた。
今年はすでに色づいている。
やばい、真っ赤地帯の見頃は過ぎてしまったか!?
若干不安がよぎったが、とにかくここから先の登山道は気持ちがいい。
樹高がどれも10m以上あって地面に草が生えていない。
だから視界は突き抜け、風が吹き抜けるのだ。
木々の隙間から周りを囲む山肌の鮮やかなモザイク模様がちらちら見える。
真冬以外は、いつもじめじめの千葉県の山とは大違い。
360度全開で爽やかだ。
しかしながら傾斜はそこそこある。
気温12℃。汗が顎から滴ってきた。
ソフトシェルを脱いで、厚手のインナー1枚になる。
背中と額の汗がす――っと引いていく。
ちょうどいい。
足元は、ふかふかの落ち葉の絨毯。
周囲に人影無し。
静寂。
見上げると派手過ぎない「朱」「橙」「黄」。
しっとりした日本美人のような紅葉だ。
「悪くないね~。悪くないよ」
10歩ごとに周囲をぐるりと見渡しつぶやく。
そして「目に焼き付けておかなければ」と自分に言い聞かせる。
そこで視界にひと際鮮やかなパステル系の「朱」が飛び込んできた。
落ち葉の「茶」に囲まれた満開の朱色。
メグスリノキだ。
その華やかさは咲き誇る桜レベル。
だが、真っ赤でないところが奥ゆかしい。
九十九折の登山道の間、つまり「横Vの字」の真ん中にすくっと立っている。
根元から見上げたい!
登山道をショートカットするように、45度くらいある傾斜を泰楽と一緒にはっていく。
真下から見上げると、パステルのシャワーが降り注いできた。
しばらくぼぉっとパステルの海に溺れる――。
1本の傑作短編を読み終えたような満足感。
けれども、その後が大変。
再度四つん這いになって登山道へ戻った。
泰楽がぐいぐい引っ張ってくれて助かりました。
標高850m付近で第一真っ赤地帯になる。
10本ほどの紅系カエデが迎えてくれるのだ。
ところが今年は、真っ赤ではなく、どちらかといえば朱または橙系だった。
しかも色調がやや白みがかっていて鮮やかさが足りない。
昨年は目に刺さるような赤だったのに……。
なるほど、先ほどお話ししたマニアさんは、この色のことを言っていたのか。
けれども、ここまでの紅葉がなかなかだったので、そんなにがっくりしない。
泰楽はまだまだ元気いっぱいで「そろそろ棒投げをしませんか?」と鼻で太ももをつんつんしてくる。
登山道から少し離れて3回だけ投げてやる。
20cmほど積もった落ち葉の絨毯の上を豪快に転げ落ちて行った。
標高920m。
メイン会場の第二真っ赤地帯に突入。
こちらも昨年のような目に突き刺さる紅色ではない。
ちょっと橙が入っている。
あとで調べたところ、今年は寒暖差が少ないので全国的に色づきが今一歩だそうだ。
それでもここは、赤一色で装ったカエデの数がハンパない。
イメージとしては野球場くらいの広さが全部赤い紅葉。
しかも、すべて10mくらいの高木なので、下を歩くと青空をバックにずっと赤い花吹雪が舞っているようだ。
登山道を外れて斜面を数十m下りる。
見上げる。
「うぅ~わっ~~っ!」
目の前で赤いくす玉がはじけた。
東から南の斜面は、すべて赤いカエデとメグスリノキ。
天を仰ぎ、その場で鼻を中心にしてぐるっと一周回る。
赤い万華鏡が回った。
ここは紅葉ドームといえる。
なかにいる間は、ずっと頭上を仰いで口をぽか~ん。
ふかふかの落ち葉の感触も手伝って、赤い紅葉のなかを遊泳しているようだ。
たぶん10分くらい単独遊泳していたと思う。
久しぶりに首を正面に向けると、嫁さんが泰楽を紅葉で化粧していた。
泰楽は私に気づくと走って来て「棒を投げて」という意味の「ちょうだい」のポーズをした。
5回投げてやる。
赤い緞帳(どんちょう)をバックに上機嫌の泰楽。
そこで嫁さんがつぶやいた。
「真っ赤な絨毯に埋もれる泰楽を撮りたかったんだけど、紅葉した落ち葉がないんだよ」
……。
と、いうことは?
見上げる。
緑の葉なし。
現在の紅葉度は100%。
つまり、本日が紅葉のピークということではないか!
うれしいぃー!
勝ち誇った表情で登山コースに戻る。
100mほど進むと稜線に出て左カーブとなる。
突き当たりでおじちゃんとおばちゃんのグループが、稜線の向こう側へカメラを構えて撮影大会を開催していた。
なにがあるのでしょうか?
稜線に立ち、斜面を見下ろす。
ズッキューン!
ハートを撃ち抜かれたと同時に目玉が2mほど飛び出してしまった。
北側斜面の視界すべてが鮮やかな黄色に色づいたコアジサイの群生地だったのだ。
その全部が50㎝くらいの高さなので、地面が隙間なく黄色に見える。
10m先も、50m先も、100m先も黄色。
こっこれは現実離れし過ぎている。
そう思った瞬間、頭にこの言葉がふわっと浮いた。
「極楽浄土」
ここを渡って対岸までたどり着けば極楽へ行ける。
そんな妄想に取り付かれてしまった。
これは親バカにとって最高の舞台だ。
わが家も大撮影大会を開催。
「泰楽ちゃ~ん、ここに座って、フセして、ニコッとして」
「かわいいよ~!」
この極楽浄土は、ただの真っ黄色地帯ではなかった。
稜線を隔てて北側(左)が黄色のコアジサイの群生地、南側(右)が赤いカエデの森。
色彩が真っ二つに割れている!
この紅と黄色の競演は100m以上続いていた。
昨年来たときは、ここのコアジサイは落葉しており、稜線以降はどの樹木も葉がない冬景色だった。
それが今回は、コアジサイエリアが終了してもカエデの紅葉が続き、場所によっては赤いトンネルとなっていた。
そして山頂直下で紅葉は終了。
結局、第二真っ赤地帯に入ってからここまで約500mに渡って紅葉ノンストップ。
こんなことってある!?
豪華すぎるよ、石尊山。
ラスト約100mは急登の九十九折。
えっちら、おっちら登って標高1,049mの頂に到着した。
ここまでで2.4㎞・2時間50分。
たぶんコースタイムより1時間くらい遅いと思う。
極楽浄土に行ってきたんだから仕方がない――。
肝心の眺望は30点。
空が「もうすぐ雨が降りますよ~」という感じで、西から南に向かって浅間山、八ヶ岳、榛名山、赤城山などを望めるはずが、すべてガスのなかだった。
それでも周囲の山々は見事に色づいていて、鮮やかなモザイク模様を見せてくれた。
紅葉登山に来たんだからこれでOKでしょ。
立ったまま「なかなかの景色ですよ」とつぶやきつつ、我々はおやつ、泰楽はサツマイモを食べて下山開始。
帰りの紅葉も美しかった。
行きで逆光だった場所が順光になって違う色合いになっていた。
鳥居に戻ってくるまで、ずっと紅葉。
どこを切り取ってもカレンダーになるレベル。
登りは2時間50分かかったけど、下りは1時間30分。
トータル4時間42分・4.8kmの山行でした。
コースの半分が紅葉の山は初めて。
特に極楽浄土と真っ赤地帯の競演は「生まれてきてよかったです」と天にお礼を言ってしまうレベルでした。
ただし、これらは寒暖差が少なかった今年ならではの現象かもしれない。
とにかく来年も必ず登ります。
さて、次は第2ラウンドの四万湖での紅葉カヌーだ!↓
https://large-dog.iehikaku.com/archives/8509
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