生瀬富士だけではもったいない絶景の数々!
2025年11月23日
・ジャンダルムが唯一無二の絶景
・袋田の滝がド迫力
・真っ赤な紅葉の嵐
生瀬富士→月居山コースは、低山とは思えない魅力がたっぷりの縦走路だ。
ところが初体験の昨年は、肝心要の紅葉を外してしまった。
1週間早く行き過ぎてしまったのだ↓
生瀬富士・月居山(茨城県)|岩稜ジャンダルムと真っ赤な紅葉を満喫する低山登山
今年は2週間前からヤマレコ・ヤマップを睨みっぱなし。
「ここだ!」
という週末に出かけることにした。

7時35分、大子町営の無料第2駐車場(223台)に到着。
紅葉ピークのはずなのに3割しか埋まっていない!
昨年は同時刻に8割埋まっていた。
どうして?
なお、駐車場のトイレはウォッシュレット付き。
ありがたい!

7時55分、登山開始。
県道を80mほど歩いて左に曲がると登山口がある。
気温7℃。
標高105m。
念のため県道沿いの、より登山口に近い第1無料駐車場(37台)をチェック。
案の定、満車。
スッキリした気持ちで登山口へ。
今回はコース自体以外にも楽しみがある。
それは生まれて初めてのアクティブインサレーションを買ったのだ。
製品名は、ノースフェイス「ベントリックスジャケット」。
これは行動中は通気性を、立ち止まれば保温性を発揮するという高機能な上着。
前回の丹沢・大山ではパタゴニア「ナノパフジャケット」を着ていたが、登り始めて50mで背中に汗が噴き出してきた。
今回はどうなるのかワクワクする。
登山口は住宅地の脇にある。
まさに近所の里山という感じ。

ところがどっこい。
コースに入った途端に秋色に包まれた。
最初は杉と広葉樹の混合林なのだが、後者は紅葉真っ盛り。
コース全体を黄色く彩っている。
しかも足元を確認すると黄色い落ち葉がほとんどない。
もしかして今日がピーク!?
去年のここは青葉が目立ったので、「前半はつまらない」という印象だった。
それがなかなかどうして。
最初からもてなしてくれるではないか。

さらに登り続けると木立の隙間からのぞく遠景が錦秋のパッチワークばかり。
基本的に緑と茶系のツートンだが、境目がハッキリしているところが美しい。
つまり楽しい!
この時点で下山時間を気にせず景色を思い切り楽しもうと嫁さんと約束する。
コースの難易度は比較的低いといえる。
最初の50分は緩い傾斜は続くので、紅葉に癒されながらのんびり歩ける。
しかし、山頂近くでロープ場があり、山頂直下では高さ2m程度の岩壁がある。
前回はそれに気づかず通り過ぎて、高さ20m近い岩壁を登る羽目になった。
ところが今回は、否が応でも気が付いた。

なぜなら、2m岩壁の手前で10人前後の渋滞が起きていたから。
大型犬連れで渋滞の列に入るのは気を使う。
ならば前回と同じ20mを登るか?
無理ではないが面倒。
どこかに巻き道はないか?
列の最後尾できょろきょろしていたらすぐに見つかった。
2m岩壁の右側に踏み跡が伸びていたのだ。
泰楽を嫁さんに預けて下見開始。
トラバースの幅が狭いが、大型犬でも歩けないことはない。
10mほど進むと踏み跡は左側に直角カーブして、岩壁を登った先に向かっていた。
その傾斜約45度。
足元は土。
4WDの泰楽なら余裕。
仮に落ちても谷底までの傾斜は同じくらいだ。
大怪我はしないはず。
嫁さんが先頭。
泰楽が二番手。
私が泰楽が落ちたときに受け止める役目を担った。
登ること20秒。
あっさり成功。
渋滞に巻き込まれていたら5分以上待っていた。

登ったすぐ先が生瀬富士の山頂だった。
1時間18分・2㎞で登頂!
そこのスペースは狭いし、眺望も1方向しかない。
なので大至急、茨城のジャンダルムへ向かう。

だが、そこでも渋滞が発生していた。
ジャンダルムにつながる岩稜の手前が岩壁沿いの細いトラバースになっていてすれ違いはできない。
なので、行きと帰りの人が順番に待っている状態だった。
さすがにここに巻き道はない。
大人しく5分ほど待った。

茨城のジャンダルムは、今回の山行にとって紅葉と並ぶ見どころ。
岩稜の上に立つと、ゴジラの背中のようにゴツゴツと尖った岩稜がうねうねと伸びていた。
この細尾根を前にして足がすくむ人も多いらしい。
だが、一歩踏み出すと意外に歩きやすい。
幅が常に2mくらいあるのですれ違いも余裕だ。
それに入口は渋滞していたが、岩稜自体は10m間隔くらいで歩けた。
なので自由に立ち止まって撮影などをしながらゆっくり奇景と眺望を味わいながら進んだ。

そこは360度の大パノラマ。
視界には常に鮮やかなパッチワーク模様が広がっていた。
青空。ほぼ無風。深呼吸。
これって幸せってことですか?
そこで気づく。
寒くない!
新調したアクティブインサレーションの保温性能に問題はないようだ。
あとは急登で汗をかいて放湿性を確認しなければ。

とにかく家族でわいわいやりながらジャンダルムに到着。
これまたゴツゴツの岩峰によじ登り、奥久慈を制覇した錯覚に全員で酔いしれる。
帰路では、同じウェアを着た若者が「こんにちは!」「こんにちは!」とボイスレコーダーを再生したように通り過ぎる。
背中に「〇〇高校」の文字が。
「もしかして登山部なの?」
「そうです。今日は大会で登っています!」
元気。かわいい。
岩稜の出入り口では、彼・彼女らの列が続いて10分以上待つことになった。
その間、複数の人に話しかけられる。
「なんていう犬種ですか?」×5人
「ゴールデンドゥードルです。スタンダードプードルとゴールデンレトリバーのミックスです」
「私は転勤族なのでいつも一人で山に登ります。寂しいです。ですから、いつか犬を飼って一緒に登りたいと思っていたんですよ」
「それなら中型犬以上のサイズをおススメします。そうすれば、ここのようなコースでも抱っこすることなく登れますよ」

月居山へのコースは、いったん山頂に戻ってから下る。
ここの傾斜が結構えげつない。
消防団員の訓練のような傾斜をロープを握って30mくらい下りる。
前回は、ここが渋滞していたが今回はスムーズだった。
意外に生瀬富士だけで下山する人も多い模様。

だが、それではもったいない。
その急斜面を落ち切った瞬間に、「紅葉の世界」がはじまる。
ここから袋田の滝を見下ろす「滝のぞき」までは紅の競演だ。
とはいえ、主役の真紅はまだ先。
序盤は黄色と赤が半々。

ここからアップダウンの連続。
でも、紅葉も続くのでそのことに気づくことなく進んだ。
最後にいや~な感じの下りと登り返しをやっつけると――。

いよいよ紅オンリー地帯に突入!
そこは「かずま」という地名らしい。

とにかく紅が濃い。
谷一面が真っ赤。
目を細めて谷底を見ようとしても、赤に遮られて確認できない。
あぁ~、これが見たかったのです。
この真っ赤谷にダイブしたい。
真っ赤に埋もれて眠りたい――。
かずまの紅を遊泳して200mほど進むと「うわぁ~っ!」という黄色い歓声が響いた。
同時に「どどどどどーっ!」という重低音の水音が。

垂直に100m以上そそり立つ大岩壁の上から、日本三名瀑のひとつ袋田の滝を見下ろす「滝のぞき」だ。

ここがまた「なぜ立ち入り禁止にしないの!?」と腰が抜けるほどの高度感。
恐る恐る首を滝つぼの方へ伸ばすと、下からの衝撃でブワっと髪の毛が逆立った。
滝つぼから吹き上げる風が、ここまで届いて来るのだ。
下はどれだけ強風なの!?
もうそれだけで恐ろしい。
でも、同時に美しい。
「だんっ!だんっ!だんっ!だんっ!」と4段に落ち、偉容感を放つ大瀑布の周囲を錦秋が彩っていた。
すでに半分以上が冬化粧となっていたがそれでも十分に華やかモコモコとした五色。
見ていて飽きない。
実際に「茨城のジャンダルム」「かずまの真っ赤な紅葉」「滝のぞき」でお腹がいっぱいに。
だが、ここで満足したらもったいない。
紅葉の最大の見どころは袋田の滝を挟んだ向かいにある月居山。
日が暮れる前に行かなくては!
数歩進んで違和感を覚える。
背中が濡れている――。
絶景の連続で気づかなかったが、今までのアップダウンの連続で大汗をかいていた。
それをアクティブインサレーションは蒸発させてくれていない。
ナノパフの透湿性が10なら、ベントリックスジャケットは9という感じ。
期待が大きすぎたか。
脱ぐのが面倒なので前チャック全開で計画続行。
そこから先は雰囲気一変の冬景色。
見るべきものがないので、さっさと下りた。

下り切った先は渡渉場。
川を渡る。
渡った先で大勢の高校生が昼食を味わっていた。
その向こう、つまり下流側にも見どころスポットがある。
袋田の滝の上流に位置する生瀬の滝だ。
BS朝日『そこに山があるから』で紹介され、手軽に近づけそうなので行ってみることにした。

距離は渡渉場から数十mしか離れていない。
ただし、深場もあるので岩をぴょんぴょんしないと近づけない。

ぎりぎりまで近づくと、やっとサイズ感が把握できた。
落差7~8mの中規模の滝だった。
ネットには15mと紹介されてたけど、どこからカウントしているんだろ?
幅が広く滑らかな造形で、それなりの迫力。
でも、袋田の滝を見下ろした後では薄味かな。
加えて川面に茶色い藻がたくさん浮いている。
夏は近づきたくないレベル。
1度見れば満足。
さて、ここからが未知の世界。
前回は、すぐ近くの登山口から直接月居山へ登った。
それがアップダウンの連続で辛いのなんの。
おまけに後半は踏む幅がめちゃくちゃ狭い階段が続いて「もう二度と来ない、もう二度と来ない」と呪いのように唱えながら登った。
なので今回は、ヤマレコで見つけたう回路を利用する。

とはいえ、途中までは同じ道順。
まずは前回と同じ登山口に入る。
中程度の傾斜が続く普通の登山道。
そして、ついに魔の階段が現れた。
同時に、右側にう回路の入り口も登場。
なぜかそこからダウンコートにスニーカーのギャルたちが登ってきている。
どう見ても登山者ではなく観光客だ。
「登山道ではないの?」と見下ろす。
びっくり仰天の急階段が伸びていた。
冷や汗ジワリ。
ヤマレコのマップで等高線の確認を忘れていた。
どうする?
嫁さんと目を合わす。
「どうせ一度は行かないと納得しないでしょ?」
行くしかない。

下りだすと、そこはノンストップの急降下。
一歩踏み出すたび、膝にガンガン衝撃が来る。
「やばい、失敗だったかも」
救いは終始視界に袋田の滝が入ること。
だから観光客がひっきりなしに上がってくるのか。
下ること約300m。
むしろ登山口より下がってしまった。
そこはドンピシャの袋田の滝だった。
外国人満載でアメ横レベルの賑わい。

滝つぼを眺める場所まで行こうとしたが途中で断念。
大型犬連れは場違いだ。
こそこそとUターンして予定していた別の登山口に向かう。

登山口は観光地ならではの茶屋の奥にあった。
ちょうど下山してきた夫婦とすれ違う。
「アップダウンはありませんよ。ずっとなだらかな階段です」
ここの選択は正解だったらしい。

そのとおりコンクリートで整備された登山道を黙々と登る。
本当にアップダウンゼロ。
渡渉場から直接より3倍は楽だった。

安堵を覚えつつ山頂直下の月居峠に到着。
時刻は13時20分。
あとひと登りだ!

下山時に撮影
と空腹を我慢していたら前方に人だかりが。
ラスト10mのところで5mくらいのロープ場がある。
そこに20人以上のツアー登山者が渋滞していたのだ。
待つこと5分。
まだ3人くらいしか降りてこない。
仕方がないので今回も、う回路を利用した。

そしてやっとこさ月居山の頂に到着!

いきなり真っ赤な緞帳のように広がる紅葉がお出迎え!
枝の先まで赤い。
足元を確認すると赤い落ち葉はほとんどない。
今日がピークだ!

大至急、豪華絢爛のランチタイム。
お昼時を過ぎていたので最前列を確保できた。
なんと途中で貸切に!
もう紅しか目に入らない。
ここまで一色に包まれた食卓は生まれて初めてだ。
もしかしたら何を食べても紅ショウガの味しかしないかも!?

今回のメニューは、あんバターと餅のホットサンド。
その場で焼いて熱々の甘々。
旨かったー!

お腹が満たされたら、撮影大会開始。
泰楽がいつもどおり「ここでいいですか?」とポーズを取り始めたら、「うわぁ~っ」と少々かすれた黄色い歓声が。
おばちゃん、おじちゃんが集まってきて「私も撮っていいですか?」
泰楽が「いいですよ」と私に目を合わせると、
「口を開けて~」(笑ってじゃないの?)
「こっち向いて~」
「流し目して~」
と大盛況だった。

帰りは第2駐車場に向かって下山。
1.5㎞くらいのゆる~い傾斜なので楽々だ。
前半はモミジに囲まれる。
もしかしたら、このコースで一番の密度かもしれない。
だが、その多くはまだ緑だった。
見頃まであと2週間くらいかかりそう。
袋田の滝の見頃は2週間前。
つまりこのエリアは、合計1カ月間も紅葉を楽しめるのか。

途中にトイレあり(汲み取り)。

思い切りのんびり・ゆっくり楽しんで7時間42分・8.2㎞でゴール。
ジャンダルムや滝のぞきで年間を通して楽しい。
春は鮮やかなツツジ、秋は真っ赤な紅葉アリ。
奥久慈の低山は、やはりレベルが高すぎる。
ただし、次回登るなら「かずま」から「滝本」へ下山してから、月居山へ向かうコースとしたい。
なお、月居山の紅葉は、今週末(2025年11月30日)までは見頃を維持していると思います。

この日は、そのまま久慈川の河原で車中泊。
ここも色彩豊かな紅葉で迎えてくれた。
疲れ切って20時35分就寝。
翌朝は、直径6mの日傘をつくる大モミジが待つ奥久慈男体山に登る。
つづく
※生瀬富士&月居山の紅葉の個人的評価
今まで「この山の真っ赤は素晴らしい!」と思えた山は4座。
・妙義山
・裏妙義
・石尊山
・生瀬富士&月居山
このなかで「真っ赤濃度」なら生瀬富士&月居山が一番。
見上げると紅のスクリーンで青空が見えない!
しかしながら、スケール感は石尊山がダントツ。
他の山は10m四方くらいずつ真っ赤地帯がある。
だが、石尊山は数百m四方が真っ赤。
思いっきりダッシュして燃え尽きて倒れ込んでもまだ真っ赤。
360度どんなに目を凝らしてもどこまでも紅い。
でも、樹高が高い+葉っぱがまばらで常に空が見える。
個人的には甲乙つけがたい――。
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