犬連れ登山「色鮮やかなもみじ谷が二ヵ所もある!」裏妙義(群馬県)

メグスリノキの紅葉ならここだ!
12月2日:てんくらA 

「あ、赤が目に突き刺さる!」

理想の紅葉登山だ。
360度、奥の奥まで真っ赤なモミジに囲まれ、
どんなに目を凝らしても、ほかのものが見えない。
そんな場所でこんな言葉を発したい。

ほぼ理想といえるのが妙義山と前回登った石尊山だ。


https://large-dog.iehikaku.com/archives/5491

だが、現状に満足したらそこで成長は終了。
探し求めること数年。
最有力候補を2つ見つけた。
ひとつは生瀬富士(茨城県)。
もうひとつは裏妙義(群馬県)。

紅葉の見ごろは、ほぼ同時。
ならば今年行くならどちらにする?
ネット情報による印象は、
赤の濃さなら生瀬富士。
赤の面積なら裏妙義。
(もみじ谷と呼ばれる場所が2か所もある)

う~ん、う~んーー。
どうしても決められない。
悩んでいるうちに生瀬富士のピークが過ぎてしまったようだ。
そこで11月25日に裏妙義へ行くことにした。
ところが前日の天気予報は強風。
それにまだ青葉があるとの情報。
そこで翌週(12月2日)に延期した。
これが吉と出るか凶と出るか?

7時30分、駐車場である旧国民宿舎裏妙義に到着。

ここは30台くらい停められる広さで、
この時点で20台くらいが停まっていた。
そのうちの1台はパトカー。
先週末に悲しい事故があった。
その影響か。

クルマを降りるとキンっとした寒さ。
気温1度。
すぐに二人の警官が
「おはようございまーす」
と近づいて来た。
登山届を出したかと尋ねてくる。
「まだです」
と答えると、
駐車場の端にある登山届ポストを指さし、
「書いてほしい」
と言われた。

もちろん、そのつもり。
嫁に準備をお願いし、ポストに向かうと、警官たちもついて来た。
そしてポストの前で横に並ぶと、
備え付けのえんぴつを「どうぞ」と手渡してきた。
物腰は柔らかだが、「絶対に書いてね」という意志が伝わる。
よほど事故が多いのだろう。

「先週末の事故のことは知っています。
でも、それは丁須の頭周辺ですよね。
私たちは犬もいるのでそこまで行きませんよ」

少しでも安心してもらおうと、一応伝えた。
しかし、そんなちっぽけな心遣いは無意味だった。

「いやいや、事故は岩場だけじゃないんですよ。
特にトラバースからの滑落が多くて、
結構重傷者も出ています。本当に気をつけてください」

やはり「裏」とはいえ妙義山と名が付くからには、
「危険」がつきまとっているようだ。

これを聞いて「そんなに危ないの!?」とアウアウしてしまい、
急いで登山届をポストへ入れると同時に
「あひがとうございますぅ」
と小走りでクルマへ戻ってしまった。

そこで気がつく。
「あぁ~、熊情報も聞けばよかった!」

振り向くとお巡りさんは次の登山者に声をかけていた。
仕方がない、出発しよう。

7時44分、スタート。
無風、気温1度。
駐車場前の橋を渡ってすぐ右折。
渓流沿いの林道を進む。
この時点(標高430m)で、広葉樹はほぼ落葉。
目に入る景色のほとんどは灰色系。
真冬のさびしい風景。

紅葉しているモミジも所々にあるが、大体は半分くらい落葉している。
これでもみじ谷は真っ赤をキープしているのだろうか。
かなり不安。

そんな飼い主の気持ちなんか泰楽には無関係。
「これを投げてくれ」
と棒を咥えて私の太ももをツンツンして来る。

周囲を見回すとだーれもいない。
「よ~し!」
五十肩を気にしつつ、棒を思い切り投げる。

ウッキウキでダッシュする泰楽。
広い登山道は、このように犬と遊びながら前進できるところがいい。

「まぁ、紅葉が終わっていても、泰楽が喜べばいいか」
そう自分に言い聞かせつつ何度も投げる。

でも、視線は紅葉を探し続けている。
ところが、私の目玉は違うものをキャッチしてしまった。
林道の脇に黒々と盛り上がる糞の山だ。
最初は
「犬の糞? だとしたらけしからん飼い主だ」
とムッとしたが、どう考えても量が異常。
大人の男性が両手ですくってもこぼれるくらいの重量感。
しかも、同サイズが離れた場所にもあった。

「くっ熊か!?」
大至急、ザックに付いている笛を
「プイ~~ッ!」
と鳴らす。

そんな感じで、53分・2.4㎞で女道登山口に到着。
そこで家族全員が口をあんぐりさせてしまった。
どう見ても登山道の角度が異常。
45度くらいある。

「こっこれを登るのか!?」
「この角度がどれくらい続くんだ!?」 

とはいえ、ここは大人気コース。
そんなに難易度が高いはずはない。
まずは嫁と泰楽に挑戦してもらった。

すると意外に足を載せる場所があってスイスイ登れてしまった。
しかも、このスーパー急登は10mくらいで終了。
その後は九十九折になっており、傾斜も中程度だった。

だからといって楽勝というわけではない。
問題は土質。
収穫を終えた畑のようにさらさらで滑りやすいのだ。

微妙に登りにくいなぁ、と感じつつ先に進んでいくと、
10分程度で尾根に出た。
そこではナラ系の黄葉が2割くらい残っており、心が和む。
ほっと一息――。

したのは約2分。
その後はトラバースの連続。
しかも土質がもろいので、足の踏み場が崩れているところ多数。
こんなところの多くは、山側にロープが張られているものだが、土質のせいかゼロ。
幸い滑落してもふかふかの落ち葉がキャッチしてくれそうな場所ばかりだが、
登り返すのはかなり苦労しそう。

特に泰楽は向こう見ずなところがあるので心配だ。
滑落したら体重30kgオーバーを担いで、
傾斜45度&落ち葉ふかふかの崖を登らなければならない。
当然ながら落ちないに越したことはない。

また、土が露出していない場所は、落ち葉が10~30㎝も積もっており、
コースがどこだがわからない。

ダウンロードしてきたヤマレコマップを頻繁に確認しなければならないので、
結構気疲れしてしまった。

さらに行く手を阻んだのが渡渉。
このコースはなぜか沢をジグザクに横切っており、
合計5回も渡渉することになった。

このときも落ち葉が積もっている場所が多くて、
どこに水たまりがあるのかわからない。
足をちょんと乗せて「うん、大丈夫!」を繰り返すので、またまた気疲れする。

これらは自然相手だから仕方がない。
それでも、要所要所に設置された道案内の看板やピンクリボンに救われた。
渡渉時はスイカサイズの岩にリボンが結ばれているところもあった。
試行錯誤して
「ここしかないよね」
となったのでしょう。
整備してくださった方々に感謝です。

いろいろ不満を書いたが、コース自体の雰囲気はいい。
晩秋の頬を刺すような凛とした冷たい空気。
渓流のさらさらという音色。
「前にも似たような空気を味わったことがあるーー」

そこで思い出した。
御岳山(東京都)のロックガーデンだ。
無人のロックガーデンをわが家だけで独り占めできるなんてウルトララッキーではないか!

そんなことを考えていたら、
いきなり視界がぶわっと広がった。
女道もみじ谷だ。

ネット情報ですでに終盤ということは知っていたが、
予想をはるかに上回る状況。
9割が落葉していた。
やはり1週間遅かった。
がっくり。

そこで想像する。
この谷の奥行きは推定200m。
その全体が赤く染まっていたらーー。

真っ赤な巨大トンネルに吸い込まれていく自分。
頭がくらくらしてきた。
おそらくトランス状態になってしまうだろう。

この妄想紅葉を楽しみながら谷をよじ登る。
最初は「こんな見上げるような谷を直登するのか!?」と思ったが、
一歩踏み出すと意外にハードではない。
傾斜は中程度だった。

そんな中、たった1本だけ輝くような紅を放つ樹木がぽつんと立っていた。

ミルクをちょっとだけ溶かしたような淡い紅。
メグスリノキだ。
なぜかこの木だけ満開状態でひと際鮮やかだった。

大至急、泰楽とコラボの撮影大会。
しゃがんだり、寝そべったりして紅を思う存分撮りまくった。

モデル犬泰楽もこの間にサツマイモをもらえて上機嫌。

ここで気づく。
周りを見渡すと落葉しているのはメグスリノキばかり。
つまり、ここはメグスリノキの谷ということだ。
なので絶好調でもトンネルは真っ赤にはならないだろう。

谷を登り切ると、再び真冬の尾根となった。
枝と枝の隙間からチラチラと雪を被った浅間山が。

2時間43分・4.4㎞で三方境に到着。

冷たい風がびゅーっと吹き抜ける。
てんくらでは風速2mとなっていたが4mはありそう。

休むことなく風穴尾根の頭へ向かう。
そこからは岩によじ登ることで360度の大展望を楽しめるという。
だが強風が心配。

まずは針葉樹林の急登が100mくらい続く。
枝がたくさん落ちているので泰楽のテンションが一気に上がる。
彼は疲れていても、そこら辺に落ちている木の棒を渡せば復活する。
本当に楽で助かる。

その後は広葉樹林のヤセ尾根。
とはいえ、妙義山ならではのエゲツなさは無いのではないので安心。

4.9㎞・3時間5分で風穴尾根の頭に到着。
だが、そこに頂を示す標識はなく、樹林に囲まれているので場所は特定できない。
ただ、ヤマレコの地図で「この辺だろう」という感じ。

その先にネットで見た高さ2mくらいある大岩があった。
大至急、冒険家の嫁がよじ登る。

「うぅわー!」
下で指をくわえる我々に解説することなく、周囲を見渡す。

3分経過。
ニコニコで下山。
「すごいよ。本当に遮るものがない。浅間山の迫力がすごかったー!」

もう我慢できない。
非冒険家の私もよじ登る。
だが、途中で泥にハマった海亀状態に。
嫁はどうやって登った?

「右足がかけられるよー」
後ろから援護の声。
「なるほど」とぐいっと身を持ち上げる。

たどり着いた頂上は一辺1mほどの四角形スペース。
右側は約50mの切り立った崖。
落ちたら一発終了。
左手で木の枝を掴み。
へっぴり腰で立ち上がる。
正面からびゅーっと北風。
あ~、強風の日じゃなくてよかった。

やっと気持ちが落ち着いて視線を正面に向ける。
「うぅわー!」

左から烏帽子岩、赤岩、そしてテレビ番組『アドベンチャー魂』で知った丁須の頭(拡大↓)。

ゴツい。
ゴツ過ぎる。
これぞ裏妙義。

お楽しみはそれだけではない。
丁須の頭の後ろには雪を頂いた日光白根山、赤城山。
烏帽子岩の左側には綺麗な三角形を描く浅間隠山。
そして真っ白な浅間山がどでん!と構えていた。

特に浅間山の存在感は別格。
「怖いけど登ってよかったぁ!」
と絶叫したい気分になった。

家族全員で上機嫌。
ウキウキで三方境に戻り、巡視道もみじ谷に向かって下山開始。
しばらく退屈な針葉樹林が続く。

やがてぽつぽつと色づいたモミジが姿を現す。
「もう残っているのはこれくらい?」
徐々に不安が増していく。

しかし、裏妙義の実力は、そんなもんじゃなかった。
6.6㎞・4時間24分、突然もみじ谷が姿を現した。
それがこれだ!

総本数は約30本。
そのどれもがまさに追い求めていた真っ赤。
しかも、前回の石尊山と違って、樹高がそれほど高くないので間近に見える。

それになんといっても、あまり落葉していないではないか。
今がピークの樹木が約半分で、もっとも葉を落としている木でも半分くらいは残っている。
トータルで8部咲きといったところだろう。

「間に合った!」
全員でガッツポーズ。
幸い、皆さん先週に集中したのか、通過する登山者は3分に1組くらい。
なので思う存分、撮影をした。

↑泰楽は、ぶりっ子タイムでも棒を離さない

そして真っ赤の真下でゆっくりランチ。
谷が風を遮り、快適に熱々のカップラーメンを味わった。
泰楽はホクホクのサツマイモといつものドッグフード。

そこから100mくらい先でも予想外のもみじ谷が。
ただし、こちらは見下ろす急斜面にあり、下りて眺めることはできなかった。
その後も数十m間隔で色づいたモミジとメグスリノキを楽しめた。

なお、普段下りの方が得意な嫁が、
なぜかこの日は不調。
泰楽は
「お父しゃんについて行かなきゃ」
「でも、お母しゃんが心配……」
を何度も繰り返していた。

6時間9分、8.66㎞でゴール。
確かに裏妙義の紅葉は見事だった。

でも、ナンバーワンではない。
色づいているところとそうでないところの差がはっきりしているので、
トータルなら表妙義(一本杉~石門)の方が楽しめる。
それに眺望も表妙義の方が上。

また、一か所で楽しめる真っ赤のスケールは石尊山の方が広い(2倍以上)。
それに眺望も石尊山の方が上。
ただし、メグスリノキの数は、ここより上を知らない。

帰りはもみじの湯を利用。
露天風呂からの眺望良し。
サウナあり。
なかなか良し。

これで今年の紅葉登山はおしまい。
次回からは雪山登山だ!

泰楽が使用しているザック↓
泰楽のバストは78cmで、Mサイズを使用。
中に入れているのは「リード」「うんち袋」「サツマイモ」「ドックフード」「ペットボトル(700ml)」。

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