小鋸山・白狐山(千葉県)|チバンドキャニオンに圧倒され、房総ジャンダルムに興奮する犬連れ中級ルート

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富士山ビュー×見どころ尽きない岩稜歩き
でも紅葉は……。
2025年12月6日

てんくら晴れ。ただし見晴らし予報△

どうしても嫁さんに登ってほしい千葉の山がある。
それは小鋸山(富津市)。

近年、チバンドキャニオンまたは房総グランドキャニオンとして注目され始めている。
山頂直下の採石場跡がアメリカのグランドキャニオンにそっくりなのだ。
雄大
壮大
偉大
実際に本場をトレッキングした経験がある私が言うのだから間違いない。

だが、小鋸山の魅力はそれだけではない。
コースの大半は左右が開けた岩の稜線
その所々で富士山がどーんっ!

また、コース上に知られざる名峰も存在する。
ヤマレコやヤマップの地図には載っていない白狐山だ。
実はこれが小鋸山以上の存在感なのだ。

山頂へたどり着くには切り立った岩稜を綱渡りのように進む
そのスリルがタマラナイ。
私は勝手にここを「房総ジャンダルム」と命名した。

嫁さんは岩登りが大好物。
なので、ぜひ味わってほしいと登頂した瞬間から考えていた。

では、いつ登るのが感動値を最大にするのか?
富士山を望むなら空気が澄んだ真冬がいい。
でも、コースに広葉樹が多いので晩秋なら紅葉も期待できるかも。
なので12月初旬の週末に行くことにした。


7時45分、めちゃくちゃ細い道を通って県道34号近くの下貫沢駐車場(無料)に到着。
なお、ここにトイレはない
なので鋸南保田IC近くのコンビニ利用が便利。

駐車スペースは5台分ほどだが、わが家が一番乗り!
紅葉の季節にこれは想定外。
ぜんぜん期待できないのかな?

クルマを降りるとぶわっと前髪が揺れた。
カキンっと冷たい風。
目に染みる。
風速5m・気温3℃。
天気予報より寒い。

嫁さんは大至急ライトダウンを着ている。
泰楽は4カ月間トリミングしていないので羊のようにモフモフ。
一方で私はウェアは厚手のベースレイヤーと若干通気性のある中綿入りのアクティブインサレーションのみ。
失敗したか?

ノースフェイス「ベントリックスジャケット」


でも秘密兵器あり。
ニトリル手袋だ。
医療にも使用される素肌感覚の手袋。
スマホ操作にも対応
風は通さないし防水
雪山登山のときスマホ対応のグローブをしていても操作にイライラして素手になることが多い。
そして、あとで指先がジンジンして後悔することになる。
これがあればその後悔が激減するらしい。
今回はその予行練習だ。
断熱性は無いがしないよりはマシだろう。

小鋸山への道のりは、基本的にバリルートということになっている。
だが、ヤマレコではコースをダウンロードできる。
スマホのヤマレコアプリを立ち上げたら、電波が届いてなかった
千葉県なのに秘境なのね――。


7時56分、登山開始。
すぐに湧き水ドロドロ地帯がある。
前回は泰楽の足が田植え直後のようになったが今回は涸れていてセーフ。


しばらくマテバシイ系の常緑樹が茂る中程度の傾斜を進む。
台風の影響による倒木多数。
ザ・千葉県の登山路
目を凝らせばどこかにピンクリボンがあるので経験者ならば道迷いはないはず。
でも嫁さんは、「ひとりなら100%迷う!」と胸を張っていた。


スタートから26分で小保田峠に到着。
右に行けば富士山の展望台の嵯峨山。
我々は左折。
(写真は進行方向を背にしているので逆向き表示)
看板が真新しい。
最近整備した模様。
ありがとうございます!

そこから100mほど進むと左右の視界が開ける。
いよいよ岩稜コースが2㎞以上続く
その後は房総グランドキャニオンだ。
つまりスタートして30分以降は見どころしかないということ。
ワクワクが止まらない。

泰楽もスイッチが入ったようで棒をくわえて振り回しはじめた。
太ももに当たって痛い。


左を向くと心がほっこりするような房総の里山が。
右を向くとスコーンっと視線が伸びて突き当りがキラキラ輝いている。
東京湾だ。
大きなお船が3つほどぷかぷか浮いている。
これも千葉ならではの景観。


さらに数十メートル進むと右側に鋸山のなだらかな山容が姿を現す。
前回はその肩にドデーンっと富士山が載っていた
だが今回は雲の中。
真上が青空なのに残念!
でも、1日晴れ予報だからいつか見えるだろう。
期待を胸に前進。
前回の様子↓
小鋸山・千葉|魅力はチバンドキャニオンだけじゃない!犬連れで富士山を望む絶景稜線ハイク


頻繁にアップダウンを繰り返す。
ロープが設置された急斜面も多数
しかしながら、どれも10m前後なのできつくはない。

と思っていたら嫁さんの眉間に深いシワが。
「ぜんぜん岩じゃないじゃん。砂じゃん。滑りそうで怖い」 
たしかに足元の大半はカラカラに乾いた土だった。


なので下りは常にへっぴり腰を強いられる。
前回来たのはたった1年前。
そのときは岩稜をスキップするような気持で歩いた。
こんなはずは……。

見渡すと倒木だらけ――。
木が倒れる→地面が露出する→弱い岩盤が崩れる→砂状になる
この仮説は成り立たないだろうか?
正解ならばこのコースは近いうちに崩壊する!?
アウアウアウ……😥

頭が真っ白になりかけたが考えても仕方がないこと。
今を楽しむしかない!
そう自分に言い聞かせて地面を踏みしめる。

???
すると足元がフカフカする。
そして黄色いぞ。
見上げる。


そこには拳ほどの大ぶりなカエデの葉が錦秋の残り香を放ちながら揺れていた。
なんだやっぱり紅葉あるじゃん!

でも、どう見ても見頃はとっくの昔。
おそらく2週間前だろう。
ということは生瀬富士(茨城県)と同時ということか。
アテが外れた。
2週間前の生瀬富士の真っ赤な紅葉↓
【茨城の犬連れ紅葉登山】生瀬富士・月居山|ジャンダルムに驚き、真っ赤な紅葉に酔いしれ、袋田の滝を見下ろす縦走路

考え事をしていたら見覚えのない森に入っていた。
360度マテバシイだらけ。
大至急、アップルウォッチで現在地を確認。
200mも間違えて進んでいた――。

嫁さんと泰楽に「ごめん。ごめん」と言い続けてUターン。
そこに追い打ちをかけるような奇声が響く。
「ぐわぁ~!ぐわぁ~!ぐわぁ~!」

カラスの断末魔
のような、怪獣ギャオスの怒号のような不快な声。
特定外来生物キョンだ。

南房総に住む知人は、毎朝この断末魔に起こされるという。
想像しただけで鳥肌が立つ。
この声は、その後グランドキャニオンに到着するまであちこちで響いていた。
こいつに罪は無いが、マジで何とかしてほしい。


文句ばかり言ってるが、気持ちのいい稜線歩きということは間違いない
相変わらず富士山は休業中だが、代わりに伊豆大島がフル回転で営業してくれた。
これはこれでいいですね、とスマホで撮影していたら、いつの間にか5Gの電波が届いていた


コース後半は、本当に岩場の連続
なかには数十メートル続くツワモノも。
ちょっぴり「房総のマッターホルン」と呼ばれる伊予ヶ岳を思い出す。
岩壁が大好きな嫁さんは水を得た魚のように登って行った。
泰楽はそのフンのように離れない。
伊予ヶ岳の登山体験記↓
富山・伊予ヶ岳(千葉県)|1日で富士山の展望と岩登りを楽しむ犬連れ登山体験記

その岩稜地帯を過ぎて最後の森を抜けたら、いよいよ房総グランドキャニオンが待ち受けている。
ここではじめて二人のハイカーとすれ違う。

私はニヤニヤしながら嫁さんの後ろを歩く。
もちろんキャニオンのすぐ近くまで来ているとは言っていない。
森の坂道を下りると草原が広がっている。
でも左手に樹木が並んでいるのでまだ気づかない。
私は無意識に抜き足差し足になっていた。


そして左側の樹木の列が切れると、いきなり視界が広がる!


「うっわ~、これが房総グランドキャニオンか! 想像していたより大きいね!!」


彼女は無意識に万歳をしていた。
「これはすごいよ。ぜんぜん千葉じゃない!」

でも、ここで時間を費やすのはもったいない。
だって、ここから小鋸山まで約300mずっとキャニオン沿いを歩けるんだから。
その前に別の見どころがある。


それは白狐山だ。
道標なし。
どう見ても登山道とは思えない斜面を登る


ここは正直に言って小鋸山に登るより楽しい。
途中に房総グランドキャニオンを一望できる展望台はあるし、


なんてったって房総ジャンダルム自称)まである!
しかもこのジャンダルムは先端の鋭さは一級だが落ちても2m程度。
大したケガはしない。
なんなら先端の脇も歩ける。
見た目は「うわぁ~!」だが、臆病者にやさしいジャンダルムなのだ。
なので家族でワイワイ写真を撮りながらのんび登った。


そして白狐山の頂は360度の大パノラマ
標高206mなので小鋸山(195m)より高い!
いつの間にか風が止んでいた。
無風。晴天。
汗ばんだ肩が陽の光でぽかぽかしている。
房総グランドキャニオンを見下ろし、振り向けば鋸山の向こうに富士山が
のはずがやはり雲の中だった――。
でも、お楽しみはまだまだ続く。


房総ジャンダルムは下りも楽しい!


白狐山を下りたらキャニオンロードをワイワイガヤガヤと歩く。
雄大
壮大
偉大
じっと見つめていると吸い込まれそうになる存在感。
自宅から駐車場まで1時間30分なのに、まったく日本とは思えない。
小鋸山の手前(写真右奥)のスパっと真横に切ったような岩山は「房総テーブルマウンテン(自称ではない)」だ。


テーブルマウンテンの真下を通って小鋸山へ向かう。


小鋸山直下が今コースの最難関。
トラバースの足場が幅20㎝くらいしかない! 
人間はロープをつかめば問題ないが泰楽は無理。

前回は、ここを前にして5分以上頭を抱えてしまった。
悩みに悩んで「泰楽が落ちても片手で持ち上げられる!」と確信して挑んだ。
すると泰楽は「なんのこと?」と平気な顔して通り過ぎた。
犬の運動神経を舐めてはいけない。

とはいえ、猿も木から落ちるので、犬も足が滑ることがある。
今回もリードをしっかり握って進んだ。
結果は前回同様に余裕。
ホッとした。


さらに難関は続く。
山頂直下の傾斜が結構エグい。
45度から60度くらいある

こちらも人間はロープをつかめるから問題なし。
でも犬の泰楽は――?

ぜんぜん平気!
上手に足場を見つけて小鹿のようにぴょんぴょん登った。
やはり犬の運動神経は半端ない。


そしてスタートしてから4時間19分・3.7㎞で登頂成功! 
こちらも360度の大展望。
障害物は白狐山よりいくらか少ない。
だが、ここでも富士山は休業中だった。
こんなに苦労して眺望がほとんど同じなら白狐山だけでもいいかな


下山後はテーブルマウンテンでランチ。
こちらも無風・晴天・ぽかぽか。
こんなに爽快な食卓ってほかにある?


ずっと目を細めながら熱々のカップラーメンをすする。


前回はここに長居しようとは思わなかった。
なぜ今回はこんなに気持ちいいんだろ?
そのとき視線が1点に集中していることに気づいた。
遠くの山肌がカラフルに紅葉しているからだ!
キャニオンなのに彩り豊か。
それはテンション上がるでしょ!
なので20帖くらいありそうな天空テラスを1時間貸切で味わってしまった。


帰路は西に傾いた陽を浴びてさらに雄大さが増していた。


なかなか離れられない。
でも早く帰ってビールを飲みたい。
泰楽はサツマイモのご褒美にご満悦。
そのうえで棒のそのうえも手に入れてさらに上機嫌に!


そして最後の最後で人間にもご褒美が。
これで稜線歩きは終わり、という地点で、やっと富士山が姿を見せてくれた!
薄っすらだけどデカい!神々しい! 

思い残すことなく7時間33分・6.9㎞でゴール。
ここで嫁さんに小鋸山の感想を聞いた。
「マジで房総グランドキャニオンには驚いた。あんなの見たことない。それに小さな岩登りもたくさんあって楽しい。正直、千葉県で一番いい山だったよ!」
私もまったく同感です。


ニトリル手袋も棘に引っ掛かって1つ破れたものの、さに素肌感覚で快適
1度も脱がなかった。
合格!

ニトリル手袋

なお、わが家は犬と遊びながら進むので一般的な人ならランチ込みでも5時間30分くらいだろう。
とはいえ、難易度は低くない。
山頂直下のロープ場はもちろん、途中のザレ場(砂地)には参った。
初心者が行くなら事前に伊予ヶ岳や高宕山に登って「余裕!」と思えてから挑戦した方がいいと思う。


帰宅前に、もみじロード(富津市)に寄る。
こちらの紅葉も終了間際。


水汲み駐車場は、紅葉期間中でも無料だった。
小鋸山の下貫沢駐車場から、もみじロードまではクルマで10分もかからない。
なのでこの2つはゴールデンセット
だ👍

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