「頂のんびリスト」が焼きたてピザを堪能する天空テラス
3月14日 てんくら:曇り・‐3℃・風速8m 見晴らし予報×(10時まで) WINDY:雲なし
今シーズン最後の雪山。
最後は毎回「軽い」山にしている。
「ちょっと物足りなかったな。でも楽しかったな」
という山後感が来シーズンのモチベーションになるからだ。
とはいえ、雪山は13年目。
かなり目が肥えてしまった。
ただ、雪があって、山頂があって、手軽だけでは納得できない。
シーズン初めの12月下旬から、う~ん、う~ん、と考えてきた。
そこで「ここならば!」と狙いを定めたのが群馬県の角間山だ。
浅間山エリアだし、標高が1981mもあるので積雪は豊富。
そしてすぐ近くに大人気の黒斑山、湯ノ丸山があるので地味な存在。
おまけに往復4時間程度で登れるらしい。
決め手は山頂から北アルプスがどーん!らしい。
これは登らないわけにはいかない。

8時7分、紅葉館(旅館)隣の無料駐車場に到着。
キャパ10台中1番乗り。
写真奥はトイレだが、冬季は閉鎖中。
積雪10㎝。
気温-5℃。
風が遥か頭上でゴーゴー言っているが体感はほぼゼロ。

8時30分、登山開始。
車道を湯の丸スキー場方面に100mほど戻ると登山口がある。
百番道しるべ観音の99番の場所らしい。

登山道に入った途端に積雪が20㎝に。
慌ててチェーンスパイクを装着。
だが20m歩いて断念。
トレースが少なくてズボズボ埋まる。
大至急、スノーシューと交換。

コースは沢沿いに続き、軽自動車なら通れそうなほど幅広で歩きやすい。
カラマツとミズナラに囲まれているが、東側だし落葉しているので足元まで日差しが届いて明るい雰囲気。
前方には、純度100%の碧空が広がっている。
だが南斜面に曲がると、さすがに雪が解けまくり。
スノーシューで半分は土の上を歩いた。
でも、半分は積雪20㎝。
脱ぐに脱げない……。

樹種が段々と白樺に切り替わっていく。
そして標高1770mで完全に白い並木道となった。
これは霧氷になったら気絶級の美しさかもしれない。
根子岳の「白い貴婦人の集い」を思い出す↓
犬連れ登山「白い貴婦人のような霧氷の森を味わい尽くす」根子岳(長野県)
その間の傾斜は、ゆるゆる。
まったく息が切れない。
ハイキングコースのようだ。
左右は凛と佇む白樺の列。
見上げれば吸い込まれそうなほど穢れない碧空。
まるで北八ヶ岳の優しさだけを切り取ったような登山道。

そんな空気感のまま1時間20分・1.9㎞で角間峠に到着。
白樺街道はここまで1㎞続いた。
左に進めば湯ノ丸山。
右に進めば角間山。
今回は角間山に登って、時間に余裕があれば湯ノ丸山も登る予定。
とりあえず東屋でおやつタイム。
我々は羊かん。
泰楽は定番のさつまいも。
気温-2℃。
日差しはポカポカしているが東屋のつららは解けていない。
ちょうどいい塩梅だ。
この峠は、左右の頂の出発点。
いよいよ急登開始か――。

と覚悟を決めていたら、さにあらず。
「いったいどこまで続くの!?」
と目を丸くするくらい長いトラバースだった。
そこは笹原で南西面している。
なので雪激減。
ついにスノーシューを脱ぐ。
途中でソロ登山者に遭遇。
(結局、最後まで出会ったのはこの方だけだった)
10分近く立ち話。
地元の方で、周辺の山はほとんど登っているそうだ。
「景色は湯ノ丸山が一番いいですね。でも、一番好きなのは角間山。なんでだろう?」
待ってました、のお言葉。
では、その理由を突き止めに行きましょう!
元気を注入してもらいぐんぐん進むと、真っ白なピークが登場。
ついに頂か!?

と、目を輝かせたのは視線が地平を越えるまでの2秒ほど。
その後はさらに大きなピークがモリモリと盛り上がっていた。
やっぱりニセピークだったのね――。

最後の150mは確かに急斜面。
でも、両手を使って這い上がるほどではない。
それにシラビソの森で、まるっきり北八ヶ岳の雰囲気。
雪が積もれば間違いなくメルヘンの世界だ。

山頂直下には、5mほどの鎖場があった。
でも核心部は1mほど。
泰楽でもお尻を押せば「ぴょんっ!」だった。

ラスト20mは大岩ゴロゴロ地帯。
蓼科山や天狗岳を思い出す。
嫁さんは岩よじ登り系が大好き。
「いいじゃん、いいじゃん」と繰り返している。

そしてスタートして2時間30分・2.9㎞で登頂!

眼下に軽井沢の街がぶわっと広がり、その向こう側に日光や谷川岳方面の山々が連なっていた。
では、お待ちかねのあの方々は?
嫁さんと「いっせいのせ!」で振り返った。
👀👀👀

「ぶわっ~~~ぁ!」
家族全員で絶叫。
白馬岳から乗鞍岳まで北アルプスが整列して出迎えてくれた。
総延長75㎞。
人間の視野では入りきらないスケール感。
まるで宇宙空間のような染み一つない紺碧を純白が横一直線に切り裂いている。
この爽快さを理解するには体感するしか方法はない。
実は、より北アルプスに近い湯ノ丸山と烏帽子岳には1回ずつ登っている。
だが、2回とも視界不良。
このエリアから北アルプスを望んだのは初めてだ。
(黒斑山からは、ほとんど見えません)

第一印象は「期待以上に近い!」
槍ヶ岳の研ぎ澄まされた切っ先まではっきりと確認できる。
北アルプス展望の山としては、根子岳と三峰山がお気に入りだ。
特に根子岳は北アルプスだけでなく、北側の戸隠連峰も目の前。
初めて最高峰の高妻山と対峙し、その雄々しさにやっつけられた。
さすがに角間山から高妻山は遠い。
でも、逆に南側の穂高岳や乗鞍岳は、こちらの方が近いかもしれない。
帰宅後に調べました↓
距離比較 穂高岳 高妻山
根子岳 72㎞ 41㎞
三峰山 44㎞ 71㎞
角間山 70㎞ 50㎞
※角間山はどっちつかずだが、どちらも遠くはない!
角間山の爽快さは、北アルプスのおかげだけではない。
360度の大展望なのだ。
北アルプスの乗鞍岳から左に御嶽山、富士山、美ヶ原、湯ノ丸山、浅間山、八ヶ岳、浅間隠山、日光男体山、白根山、谷川岳、白砂山、四阿山、根子岳、妙高山、高妻山。
全部丸見え。
どこの写真を撮っても絵になる。
身体をぐるぐるを回転させ「ほへぇ~」としていたら、太ももに「つんつん」とわずかな衝撃。
見下ろすと、まん丸おメメの泰楽が見上げていた。
「すまん、すまん。今年の目標はおまえとの思い出づくりだったね」↓
愛犬のゴールデンドゥードルが8歳に。あと何年一緒に遊んでくれるだろう|シニア犬とのアウトドアで決めたこと

ではここにどうぞ、と近くの岩を指さした。
すると彼は「あいよ!」と飛び乗る。
泰楽を中心とした360度ぐるぐるの撮影大会の開始だ。

泰楽はその間、笑ったり、睨んだり、立ったり、座ったりで景色に変化を加えてくれた。
さて、思い出は十分に記録した。
ここで昼飯にすれば、さらに胸に刻まれるはず。
でも、どうしてもその胸にひっかかるものがある。

目の前に立ちはだかる湯ノ丸山の向こう側が見たい。
方角的には南・中央アルプスがまさにそこにあるはず。
あの頂に登れば、ずらっと並んだその雄姿が拝めるのではないか?
気になると止まらない。
時刻は、まだ11時30分。
これから登って到着するは12時30分(甘い!)。
「どうでしょうか――?」😅
恐る恐る嫁さんに聞いてみる。
「どうせ行かないと後悔するんでしょ?」
😝😝😝
大至急、向かいましょう!
わっせ、わっせと下山すること15分。
ふいに「オレ、なに急いでるんだ?」と頭によぎる。
「今年のテーマは泰楽とのんびりではなかったのか?」
正論派の声が大きくなっていく。
「そんなに行きたければ来年でもいいのでは?」
この言葉が決定打。
そうだ、このコースは気に入った。
ならば来年もこのコースで湯ノ丸山に登ればいいではないか!
この時点で下山開始20分。
ぐっとお腹に力を込め、後ろからついて来る嫁さんと泰楽に上目遣いで伺った。
「すみません。やはり角間山でご飯を食べませんか? 湯ノ丸山は来年にしませんか?」
🙇🏻♂️🙇🏻♂️🙇🏻♂️
「キッーっ!」👊🏼
彼女の雄たけびが山中に響き渡った。
「あんたがどうしてもって言うからついてきたのに、なんなのそれ!」
おっしゃるとおりです。
でも、歩きながら「泰楽とまったり宣言」を思い出したのです。
これからは本当に「非実力派宣言」をいたします。
どうかあなたの背中のスノーシューを持ちますのでお付き合いいただけないでしょうか?
🙇🏻♂️🙇🏻♂️🙇🏻♂️
彼女は渋々Uターンしてくれた。
泰楽は空気を読んで私の太ももを鼻先でつんつん。
「いじけてはいけないよ😉」
もちろんです!
気持ちを切り替えて猪突猛進。
20分かけて下りた道筋を20分で駆け上がった。
山頂に再到着したのは12時20分。
相変わらず無人・無風。
おまけに気温は6度に上昇していた。
天気予報は曇りの風速8mだったので大外れだ。

今度は景色ではなく、その場の多幸感を噛みしめつつ北アルプスの面々に向かってテーブルとイスを広げる。
穢れる前のピカピカの日差しが降り注ぐ下、泰楽の居場所は、ひまわり模様のレジャーシート。
雪山でのランチは、いつも素早く済ませられるサンドイッチにしている。
凝っても寒くて楽しめないからだ。
だが、今回は「絶対に泰楽とまったり!」と決めていた。
(さっきまで忘れていたけど)
なのでメニューは、冷凍ピザとあんまんのホットサンド。
バーナーでじっくり温める。
泰楽は嫁さんの身体で温め続けているさつまいも。
家族全員でハフハフしようというわけだ。
風がびゅーびゅーならば東屋まで下りて実行しようと考えていた。
だが、このときの気象状況は極上レベル。
ライトダウンを羽織ることもなくじっくりと炙る。
その間は、山談義。
あの山とあの山ならどっちがいい?
私の毎度おなじみの質問に、嫁さんは泰楽に芋を与えつつ答える。
ときどき自分でも頬張り泰楽に睨まれている。
さっきまでキレまくっていたのに菩薩のような表情だ。
私は、目の前の山脈と焼き具合を交互にチェック。
まだまだだな、と山塊の陰影に見とれていたら、ピザ生地が焦げる香ばしい匂いが漂ってきた。
完成だ。

まずは嫁さんが味見。
ハフっ!
もぐもぐ!
どう?
「熱い! これはたまらないよ」
続いて私もハフっ!
程よく焦げたピザ生地がカリっと鳴る。
中からトロトロに溶けたチーズがじゅわぁ~。
熱っ!熱っ!熱っ!
しっかり噛めずにハフハフを繰り返すと、鼻からチーズの風味がふわ~っと漏れ出してきた。
298円の冷凍ピザがここまで旨くなるとは!
「ほら、お前も食べてみ!」
泰楽に生地の耳を差し出す。
犬に人間の食べ物は与えない。
これは我が家の基本方針だ。
でも、リゾート地では無礼講。
泰楽に「旅行は楽しい」と感じてほしいから。
だが、律儀な彼はそれを拒む。
「どうせ食べたら怒るんでしょ!?」
いやいやそんなことありませんよ。
どうぞどうぞ。
「では、遠慮なく」
パクっと口に入れる。
ムシャムシャしている間もこちらをじっと見つめている。
「これでお父しゃんと、もっと仲良くなれましたね」
泰楽の鼻が少し高くなったように見えた。

次は、あんまんをじっくり炙る。
すでに30分が経過。
泰楽は、さつまいもを1本平らげて目をしょぼしょぼさせながら足を投げ出して横たわっている。
無風・無音・適温。
極上の天空テラス。
まるで時間(とき)が止まったような空間。
まったり過ぎて文句なしの冥途の土産クラス。
なんでこんなに落ち着くんだろう。
表面がカリカリに仕上がったあんまんをパリッと半分に割って嫁さんに渡しながら考えた。
1番は快晴の無風ということ。
雪山の頂で、これは奇跡に近い。
2番は程よいサイズ感の山頂ということ。
広さは10畳くらい。
この狭くもなく、広くもなくという空間がプライベート感をさらに増幅してくれている。
そして3番目は本当に貸切ということ。
最初に登頂してから2時間近く誰にも会っていない。
その間、360度の大パノラマを貸切っているのだ。
落ち着かないはずがない。
決めた。
今日から私は「頂のんびリスト」になる!
もう焦って長距離を歩くことはしない。
泰楽と一緒に、とにかく頂でのんびりすることを追い求めるのだ!
嫁さんとぽつぽつと山談義を続ける。
「この眺望は大当たりだね。来てよかったよ」
北アルプスに向かって目を細め、熱々で甘々のあんまんを頬張る。
ふっと微かな向かい風が頬をかすめた。
「でも実は、私の優先順位の一番は景色ではないんだよね。積雪なの。ふかふかの雪にスッと足を入れる瞬間がたまらない」
「えっ、そうなの? 山頂に立たなくてもいいの!?」
私たちは昨年銀婚式を迎えた。
それでもまだ知らないことがある。
山頂でのんびりするからこそ知ることができた。
そうなんだ、景色じゃないんだぁ……。
ぶつぶつ頭で繰り返しつつ、「たまには後ろも」と振り返った。
そこで大きく目を見開く。
浅間山のてっぺんから蒸気機関車のような勢いで煙が噴き出しているではないか!

「今日の浅間山は元気すぎないか!?」
この一声で、まったりモードが一変。
嫁さんは独立峰が大好物。
特に浅間山の滑らかなのに荒々しいという特異性に魅せられている。

さっと立ち上がり、無言でスマホを向け続けた。
「何ごとですか!? 何ごとですか!?」
泰楽は彼女の足元で右往左往。
結局、山頂には1時間30分も居座ってしまった。
その間の心地良さは歴代ナンバーワンだったかもしれない。
思い残すことなく下山開始。
そして、わずか1時間10分で駐車場に到着してしまった。
6.9㎞・6時間40分の山行だった。
そのうち2時間以上が休憩と無駄なUターン。
角間山は、峠まではハイキングコース並みの緩さ、その先もキツくなく、途中に白樺霧氷や北八ヶ岳のようなメルヘンも期待できる。
さらに山頂は極上空間。
非常にバランスがいい。
休憩なしで往復すれば約4時間と、初心者にもおススメできる穴場だと思う。
浅間山エリアは、黒斑山を筆頭にどこも大人気。
それなのにこんなに静かな場所があったとは!
いつもは100点の山行をすると、その山は飽きてしまう。
だが、ここは通いたい。
通って山頂の端っこで泰楽と昼寝をしたい。
もし、そんな様子を見かけたらそっとしていただければ幸いです🙇🏻♂️

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