犬連れ登山「急登沿いの樹氷と紺碧の空に酔いしれる」蓼科山(長野県)

ついに山頂に到達したのに……。
2024年1月27日 前日:てんくらA快晴 気温-9℃ 風速17m 実際:快晴のち曇り 気温-6℃ 風速5m

「いつか蓼科山に登らなければならない」
長年頭の片隅にずっと引っかかっていた想いだ。

8年前、当時雪山登山2年目の我々は、
先代犬(バーニーズマウンテンドッグ)と共にこの山に挑戦した。
「八子ヶ峰から見上げた山容が美しかったし」
「登山道は一直線で迷いようがないし」
「10本爪のアイゼンは用意したし」
という期待と自信の山行だった。

ところがどっこい、さすが百名山。
一直線=直登ということでキツいのなんの。
しかも登山道そのものが直径1mくらいの大岩敷き詰めコースで、
当時10歳&体重40kgの老犬には、そもそも無理だった。

それでも「せっかく来たのですから」と、
ずっとお尻を持ち上げて登っていった。
記憶としては10秒に1回、米俵を持ち上げている感覚だ。

そこに追い打ちをかけたのが天候。
段々と雲が多くなって風がびゅ~~~っ!
気づけば夫婦揃って指先もつま先もじんじんじん
(嫁はその後指先の皮がむけた)

生まれて初めて凍傷の恐怖に襲われ、
7合目くらいで登頂を諦めた。

以来蓼科山は、
「リベンジしてやる!」
「でも怖い……」
を行ったり来たりする山となっていた。

そこで今回。
天気予報を確認すると、
那須方面ダメ。
谷川岳方面ダメ。
浅間山方面ダメ。
八ヶ岳方面ど快晴!

使用しているベースレイヤーや道具のスペックは8年前とは段違いによくなっている。
なにより一緒に登る泰楽(ゴールデンドゥードル)は元気ぴんぴんぴん
蓼科山に登るなら今しかない!


中央自動車道から見た南アルプス。
朝日に焼ける山肌と満月のコラボにうっとり。
いい予感しかない!


8時15分、女乃神茶屋登山口に到着。
案の定、満車。少し戻った駐車スペースにギリギリ停められた。


8時45分、登山開始。
舗装道路を300m歩いて蓼科山登山口へ向かう。


登山口に到着すると積雪は約10cm。
チェーンスパイクを装着する。


しばらく針葉樹とダケカンバの緩斜面を歩く。
積雪が足りないので笹藪が足元を邪魔する。
いつ急登になるかドキドキ


スタート(以下同)から700mで中程度の傾斜に。
記憶ではスタートからずっと急登だったはずーー。
いつ急登になるかドキドキ。


そして1.5㎞でついに急斜面が登場。
ここからずっと直径1mくらいの岩を乗り越えていく。

覚悟を決めてひとつめを乗り越える。
ふたつめ、みっつめーー。
10分くらい登ってふと思った。
「意外に辛くないぞ!」

 


訳を考えながら岩に足を乗せる。
「岩? そうだ!」
急斜面ではあるものの一歩一歩が平面の岩の上なので足首がVの字に曲がらない。
ちょうどスノーシューのヒールリフターを使って登っているような感じなのだ。
それに何といっても今回は体重40kgの犬のお尻を持ち上げ続けなくて済むので楽!


泰楽はそんなことは知らずに「今回はちょっと面倒ですねぇ」という表情で岩を黙々と登っていた。


この辺りから人とすれ違う頻度が増してきた。
それはもうひっきりなし。
さすが百名山。
すれ違うたびに「犬は平気ですか?」と声をかけて泰楽の身体を自分の身体で覆う。
しかし今回は100%の確率で「平気ですよ~」と言っていただいた。
それどころか8割の確率で「犬なのにゴーグルしている!」と興味を持っていただいた。
これは思わぬ展開。
ちなみにゴーグルは紫外線による白内障予防のためです。


そして1.7㎞・標高2090m地点で先を歩いていた嫁が振り返ると同時に「うわ~、あそこー!」とトレッキングポールで背後を指した。
そこに構えていたのは中央アルプスの山々だ。
右側には御嶽山の雄姿もはっきり見える。

 


標高2100mを超えると左右はシラビソの森になった。
枝に綿のような雪が乗りはじめてメルヘンの世界に。
これぞザ・北八ヶ岳の風景だ。


2・5㎞・標高2230m地点で強烈に記憶に残っている場所に着いた。
左側に通路があって、その先に広場がある場所だ。
前回は暴風が吹き荒れており、とにかく風よけのつもりで入っていった。
当然、周りの様子は確認できなかった。

だが今回はピーカン。
期待を胸に進んでいく。
するとそこはスキー場のような広大な斜面の展望台だった!

2260m地点に到着すると、また記憶がよみがえった。
そこでUターンを決断したのだ。
意外に先まで行っていたんだね。
7合目どころか9合目じゃん。
これで過去の自分たちを追い抜いたことになる。


標高2380mから境界線をビシっと引いたように樹氷の世界に突入。
すべての木々が根元から枝先まで真っ白に雪化粧した。
霧氷&樹氷が登山目的の嫁と泰楽は狂喜乱舞。
なかなか先に進めない。

このときの積雪は30㎝。
もうチェンスパはキツい。
12本爪アイゼンと交換する。


純白のもこもこトンネルを「うわ~」「うわ~」ときょろきょろしながら抜けて行く。


そして3㎞・標高2480m地点でついに森林限界を越えた。
振り返るとはじめて南八ヶ岳、南アルプス、中央アルプスが同時に姿を現した。
どれも雪をいただいて美しい。
大好物の北アルプスはまだ蓼科山自体の山体に阻まれて見ることはできなかった。


「あと一息!」と気合を入れたとき、
「きゃーっ!」
と黄色い声がこだました。
はて、芸能人でもいるのかな? と思った瞬間。
「犬がいるぅ~」「撫でていいですか?「写真を撮っていいですか?」
と泰楽が大勢の女性陣に囲まれてしまった。


泰楽もしっぽをぶるんぶるん振って一人の女性に突進していった。
そして顔面を太ももにぐりぐりぐりーーーっ。
赤の他人に「ゴーグル邪魔なんです。取ってください」とお願いしているのだ。
大至急、ダッシュしてぺこぺこ謝る。
それでも「かわいい~っ」の大合唱は治まらず大撮影会となった。
蓼科山万歳。


森林限界を越えたら山頂はすぐ、と思っていたが、意外に先があった。
右方向に大きくトラバースしてUの字を描いて登頂するのだ。
空の色がタマラナイ。


12時50分、4時間17分・3.3㎞で登頂成功!
やっと8年越しの無念を晴らすことができた


山頂から360度見渡して驚く。
「広い!」
岩に埋め尽くされた円形の大空間で、中心が少し凹んでおり、真ん中に鳥居が立っている。
だが、肝心の北アルプス方面に目を凝らして口があんぐり。
乗鞍岳から白馬岳までぜ~んぶ雲の中だったのだ! 
とりあえず北アルプス側の石碑を目指す。


石碑から目を凝らして北アルプスを探す、
何度も目をこすって探す。
だが見えなかった……。


↑北アルプス方面


肩をがっくり落としてランチ。
それでも八ヶ岳と中央アルプスは見渡すことができた。


ところが両山脈とも刻々と雲に包まれていく。
赤岳の山頂はすっかり雲の中。


大至急、下山開始。
下山道方面はまだ晴れ渡っていた。


真っ青な空、木々に綿のように積もる雪。
メルヘンの坂道だ。
基本的に急斜面は嫌いだが、こんなに美しい斜面はなかなかない。
新鮮で気に入った!


下山途中で雲が流れて八ヶ岳がバッチリ見えた。
登山あるあるーー。

7時間10分・7.3㎞でゴール。
ランチタイムを除いてもコースタイムより1時間以上遅い!


考えられる理由は、「写真撮り過ぎ」「泰楽ぐずり過ぎ」。
写真は周囲がきれいだったから仕方がない。
泰楽については今回アイゼンなしは辛かった。
元気いっぱいの6歳でも「今回はちょっと滑るっす」と立ち止まることが多かったのだ。

そこでいうと当時10歳だった先代犬(バーニーズマウンテンドッグ)は、
よく標高2300m近くまで登ったと思う。
わが息子ながらあっぱれ!

駐車スペースから1㎞下って道沿いで湧き水汲み。
お風呂は同じく帰り道沿いの「オーベルジュつつじとかえで」。
貸し切りで露天風呂を味わった。

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