絶景・緩斜面・ヒップそり天国!
てんくらA・-14℃・風速5m⇒実際は終日雪・-12℃・風速20m
年末年始は雪山に登ることにしている。
そこでいつも悩みの種となるのが積雪だ。
ここ数年、地球温暖化の影響などで日本海側以外の積雪は極端に少ない。
雪がないなら登る気になれない。
新雪に埋もれながら犬が笑顔で駆け回り、
私たちもモフモフの新雪を踏みしめ、
山頂から家族全員で見渡す限り白銀の山々を眺める。
これができるから山に登るのだ。
今年(2021年)最初の雪山登山は1月9日に予定していた。
そこで狙っていたのは安定して雪がある天狗岳(八ヶ岳)。
ところが前日の天気予報は、寒波&暴風(てんくら)。
そのほか日帰りで行ける山のほとんどは、どこも似たような予報だった。
その中で那須方面だけ「晴れ&風弱」でA評価となっていた。
那須岳(茶臼岳)は自宅から比較的近距離。
さらに雪もあり、雄大な景色も味わえるらしい。
なのでずっと気になっていた。
しかし冬の那須岳はいつも風が強い。
風速20mは当たり前。
そのため登山日記の登録サイト「ヤマレコ」では、「途中で登頂を断念!」といった記録を頻繁に見る。
だから「晴れ&風弱」はめったにないチャンス。
今行くしかない!
7時半に高速道路上で、念のためてんくらをチェック。
すると8時から9時が雪に。
「とっ当日の予報変更なんて……」
とはいえ、10時以降は引き続き晴れの予報。
「山頂で晴れていればいいか」
気を取り直してアクセルを踏んだ。
8時10分、大丸駐車場に到着。
周辺は晴れているが山頂は霧の中でまったく見えず。
しかも駐車場は晴れているにもかかわらず、雪がちらついている。
「まぁ、これから晴れるだろ」
8時37分に登山開始。
気温‐8℃。ほぼ無風。積雪は30㎝と十分。
山頂は、むき出しの岩場で雪は積もっていない、という情報をヤマレコでつかんでいた。
つまり12本爪アイゼンは不要。
なので最初からチェーンスパイクを履く。
午後から晴れるはずなのでゆっくり行く。
コースの前半は、ずっと那須岳を左に見る明るい樹林帯だ。
この雰囲気は八ヶ岳の牛首山に似ている。
名物の鳥居の積雪は1m。
森林限界を抜けると右に朝日岳がどーんっ!
正面に峰の茶屋跡避難小屋が現れた。
そして雄大な雪山に囲まれた異空間が広がっていた。
イメージとしては赤かっ色の火星に雪が降った感じ。
視界に入る人工物は遠くの避難小屋だけ。
これはいいぃ!
この景色が那須岳を百名山にさせたのか!
「人工物ゼロの大迫力雪景色」という意味では、平標山と似ているがこちらの方が荒々しい。
雲の切れ間から時々青空がのぞくが、ガスで那須岳と朝日岳以外の山は見えない。
それでも半端じゃない異次元感。
ここは本当に地球?
風と寒さが大幅に増したがテンションが上がって気にならない。
避難小屋に着くと天候がさらに悪化。
気温‐12℃。風速15m以上。
山頂付近の岩の表面は凍っているはず。
アイゼンに履き替える。
そこからいきなり急登に。
所々雪が深くスノーシューが欲しくなるが、短距離ですぐに岩が出る。
アイゼンで正解。
ただし、足場はつるつるではなく雪かゴロゴロの岩場なのでピッケルは不要。
お鉢の分岐点で反時計回りを選択。
強風でトレースが消されて何度か迷う。
おそらくお鉢の外側は絶景だろうが一切見えず。
さらに風が増して目が開けられない。
しかしサングラスをするとバラクラバからの鼻息で曇る。
避難小屋にいた人たちが皆ゴーグルを装着していたことに納得。
3時間15分、登頂成功。
登山者が数人いたが展望はゼロ。
記念写真撮ってすぐ下山開始。
下りはモフモフの雪が積もる部分があって楽しい。
積雪はひざ。
綿のような新雪をあえて蹴散らして駆け降りる。
コケて転がるのもアミューズメント。
泰楽(ゴールデンドゥードル)は、自身の身体でつつつっ~っとスキーをすることを覚えた。
ただ、突風が吹くと進めなくなり、嫁さんは棒立ちに。
泰楽は風よけ確保に必死
推定風速20m。
ちっとも「てんくらA」ではない。
ザ・冬の那須岳ではないか。
山頂から避難所へは40分で戻った。
大至急下山したいが、空腹で体力を奪われていたので昼食に。
メニューはカレーうどんの素&親子丼の素&とろけるチーズのカレーうどん。
気温―12℃。
風速10m(建物で軽減)。
体感温度は―20℃以下。
激寒
本当は全員で避難所の中に入りたいが、誰が見てもワンコの泰楽と一緒では無理。
そこで嫁さんと代わりばんこで中に入って調理&イートをすることにした。
つまり、泰楽はずっと屋外。
銅像のように凍りついてしまった。
これを見て誰もが「かわいそぉー!」と思うだろう。
私も同感。
だが、意外に本人は平気らしい。
その根拠として少しも震えていない。
真夏の渓流ではガッタガタに震えているので、ワンコ的にはこちらの方が快適なのかもしれない。
そもそも犬という生き物は、我々が想像するよりもずっと寒さに強い。
北極のホワイトアウトの中で一晩過ごしても生き残れる(犬種による差あり)。
くわしく知りたければこちらの本を読んでほしい↓
とはいえ、ワンコでもお腹が減ると寒さがこたえるはずなので、犬ソーセージと焼き芋をたっぷり与えた。
ちなみにこの避難小屋の存在は大正解。
無風地帯で食す熱々のカレーうどんは格別だった。
この建物がなかったら那須岳の印象は、「生き地獄でした」となっていただろう。
復路も人工物なしの岩&雪だけの異空間を堪能。
往路よりも風は強まったが、視界の先が青空なので気分は落ち込まない。
樹林帯に入ってからはボブスレー(ヒップそり)天国。
100mクラスが3本くらいあった。
しかもフワフワの新雪緩斜面なので恐怖ゼロで楽しいだけ。
避難小屋から1時間10分でゴール。
帰りは合計1時間50分だった。
トータル6時間17分。8.7㎞。
これはスーパーゆっくりなので急げばランチ時間込みで5時間30分だろう。
絶景・緩斜面・ボブスレー天国で那須岳最高!
さすが百名山。風速20mでも楽しかった。
次回は気候が安定する3月に剣が峰まで狙うつもりだ。