乾徳山ー山梨県|富士山を望む大草原・岩登り・大パノラマを一度に味わう犬連れ登山

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日帰り可能で草原と岩場が両立する唯一の山
2026年3月21日 てんくら:快晴・2℃・風速5m・見晴らし予報◎ WINDY:雲なし 実際:春霞あり

3月下旬は、毎年雪山に登っている。
だが、今年から若干飽き気味。
純白よりも泰楽と山頂でくつろぐ「頂のんびリスト」を追求したい。
「どうしてのんびりしたいのか?」はこちら↓
角間山-群馬県|スノーシューで北アルプスを独占!雪山初心者・犬連れ登山の穴場

のんびりできる山の条件は以下。
・千葉県から日帰り可能
・絶景がある
・広大な草原がある
・岩場がある
岩場については冒険家である嫁さんのリクエストだ。

ところがこの条件をクリアする山は極めて少ないことがわかった。
草原と岩場は基本的に両立しないのだ。

近いと思えるところは白谷ノ丸
白谷ノ丸・大蔵高丸(山梨県)|富士山と並んで歩ける絶景稜線-2000m級とは思えない手軽さ!
それと金峰山
だが、両方とも冬季は最短距離の登山口が通行止めで我々に日帰りは無理。

そこでAIに相談したところ、
「千葉県から日帰り圏内では唯一ここです!」
と鼻息荒くある山を紹介してくれた。
それが山梨県の乾徳山だ。

調べてみると、本当に大草原ありで、ド迫力の岩場あり。
かなり興味深い山だ。
問題は岩場の難易度が泰楽には無理っぽいこと。
無理ならUターンすればいい。
その覚悟で挑戦することにした。


登山口は最短距離の大平高原を選択。
だが、駐車場までがちっとも最短ではない。
ラスト6㎞の林道は、ぐにゃぐにゃカーブの連続。
おまけに登りの傾斜がきつく、細くて基本的にすれ違い不可。
途中の眺望も無し。
段差があるような砂利道ではないので一般車でも走れるが、林道走行に慣れていないとドキドキが止まらないと思う。


8時に駐車場到着。
出てきたオーナーに800円を支払う。
キャパ約25台中7番目。
これでも多い方だという。
3連休だからね。


駐車場内にトイレあり。
ただし、水洗ではない。


8時22分、登山開始。
気温2℃・快晴。
しばらく舗装された車道を歩く。


5分で登山口に到着。
以前、牧場だった草原の脇を登る。
一歩ごとに霜柱がサクサクと鳴る。
帰りにぐちゃぐちゃになっていなければいいけど。


登山道は、軽自動車が通れそうなほどの幅で落葉した木々に囲まれて明るい。
数分進んだら左側の木立の間から富士山が現れた。
デカい。
でも春霞ではっきりとは見えない。
てんくらの見晴らし◎は外れか?

途中でつづら折りの中程度の傾斜に。
息が切れてきた。
中綿入りのアクティブインサレーションを脱ぐ。
つづら折りが終わったら舗装道路。
おそらく車が通れる。

傾斜が緩くなってホッとしたところで口数が多くなる。
AIに聞いたアルプスの成り立ちを嫁さんに教えてあげた。
AIいわく、北・中央・南アルプスは明治時代の外人さんが勝手に名付けたもの。
選択に明確な根拠はない。
ただし、共通点はある。
それは「火山ではない」ということ。
日本アルプスは、すべて地殻プレートに押し上げられてできたというのだ。
なので、みんな屏風のように連なっている。
一方で八ヶ岳や両白山地も、なかなかのスケールだが火山なのです。


さて、1時間弱で国師ヶ原と道満尾根との分岐に到着。
今回は道満尾根から登って、国師ヶ原方面から下ってくる予定。
道満尾根は岩がゴロゴロの中程度の傾斜。
ここでふっと髪がなびく程度の風が吹きだす。
さっとおでこの汗が乾く。
所々で富士山がチラ見せ。


スタートして1時間10分くらい、距離では約半分の地点で枯草が広がる展望スポットに出る。


南アルプスと富士山が丸見え。
ただ両方は離れているので、一緒に写すことはできない。

このあたりから傾斜が緩くなる。
道幅も広くなって、のどかな高原の遊歩道といった雰囲気。
ミズナラ、アカマツ、ブナ、ダケカンバ、白樺。
文字どおり雑木林。
途中でツツジらしき低木がトンネルをつくっていた。
これが満開になったら気絶級の異世界感かもしれない。
景色よし、程よい傾斜と理想的なコース。


だが、気になる点も。
とにかくリボンが少ない。
二百名山だから至れり尽くせりだと思っていたら、100mに1本くらいしかない。
真冬は落葉してどこを見ても似たような雰囲気なので道に迷いやすいかもしれない。


1時間40分で扇平に到着。
きっぱり線を引いたように、いきなり大草原が広がる。
突き当りの三角の頂が乾徳山か?


草原のど真ん中に、ドデンっと高さ3mくらいの大岩が鎮座していた。
名所となっている月見岩だ。
裏から登ることも可能。
上に立つと正面に富士山がどーん!
なのだが今回はやはり若干ガスっている。
横一列に連なっているはずの南アルプスも、ほとんど見えず。
残念!

「見えない~、見えない~」と泰楽と二人で手のひらで目の上に庇をつくって目を凝らしていたら、足元で人だかりができていた。
月見岩の順番待ちだ。
あわわわ~っと駆け足で下りた。

登頂後は、この周辺でランチをするつもり。
ぐるり360度視界が開ける最適地のように見えるが、全体的に傾斜がきつい。
さらに多くの人が通るので、のんびりはできないかも。


扇平を約200メートル突っ切り、手洗岩を過ぎると再び樹林帯に入る。
森に入ると足元が、ぶ厚い落ち葉の絨毯となっていた。
丸みのあるカエデもある。
これは紅葉もたまらないかもしれない。
ただし、この葉の形状からすると赤ではなく黄色系だと思う。


やがて岩がゴロゴロで両手を使って這い上がるようなルートに。
ただし必ず足場があるので、ロープが必要と言うわけではない。
ここだけ切り取れば蓼科山に似ているかも。
この周辺もリボンが少なくて迷いがち。


さらに所々凍ってスベスベの雪も登場。
転んでいる人多数。
一歩一歩緊張して踏み出さなければならず、生まれたての小鹿のような姿勢を強いられる。
大至急、チェンスパを履く。


その後、鎖場も登場した。
とはいえ、使わなくても登れるレベル。
泰楽も自力でヒョイっ!


「やるなぁ~」と頭を撫でたら、折れたつららを拾って自慢げに噛みまくった。


その先は、大岩を両手を使ってよじ登るルートに。
せっかく履いたチェンスパを脱ぐ。
結構、忙しい――。

2番目の鎖場は5mくらいの長め。
泰楽のお尻を押す。


そこを越えたら正面が髭剃岩だった。
高さ3mくらいの大岩が日本刀で叩き切ったようにスパッと割れている。
その割れ目に入れるのだ。
(団体さんの順番待ちあり)

だたし、ザックを外したうえでスリム体型限定。
もちろん我々は胸を張り、鼻息を荒くして突っ込んだ。


視線の先は、岩壁に切り取られた光の柱。
白く輝き向こうに何があるのかまったくわからない。

先頭は嫁さん、続いて泰楽、私の順。
最初の5歩は空間に余裕あり。
調子よく進むと、左右の岩壁の凹凸が後ろに流れていく。
まるで宇宙船で星の海に突き進んでいく感覚。
背中がムズムズする。

だが、スピード感はここまで。
嫁さんのお尻が挟まってしまった――😅
困り顔で振り向く泰楽。
横向きにならなきゃダメでしょ!


体勢を整え、さらに進む。
視線の先が白い光から徐々に青味がかってきた。


その鮮やかなブルーを横一直線に切り裂くホワイトのライン。
南アルプスだ。
目線を左に向ければ霊峰富士も待ち構えていた。

割れ目の先は高さ数十メートルの断崖絶壁。
フェンス無し。
そこは名峰の展望台だった。
ずいぶんと凝った演出をしてくれる。
運よくこのときはガスが薄くなっていた。

さて、ここから山頂までは、アミューズメントのオンパレード。
まず、髭剃岩の先には、大岩壁の側面を削り通したようなトラバーズがある。

その途中が大空へ突き出て右カーブしているのだ。
ここだけ切り取れば天空の岩盤の上にポツンと立つ人
冒険野郎の命知らずだ。

私もユーチューブで確認したときは、「ここでUターンかも」と覚悟していた。
なので突入前にヘルメットを装着(カヌー用だけど)。
ドキドキしていたが、嫁さんにバレないようにできるだけ目を合わせないようにする。
今回も先頭は彼女、続いて泰楽、最後は泰楽を救うために私だ。
ところが実際に歩いてみると、想像よりもコースの幅が広い。
高所恐怖症偏差値65の私でも「あと1段階上でもOKです」という恐怖度数だった。


なので最恐ポイントと覚悟していた右カーブが気持ちいいこと!
微風を全身で受け止め、限りなく澄み切った碧空の下で白銀の連なる南アルプスを眺める。
まるでスカイダイビングの途中で一時停止ボタンを押したような瞬間だ。

ただし、今回最大の難関は、やはりここだった。
このトラバースの終点がハシゴなのだ。
この先にもハシゴはあるのだが、ほかはステップとステップの間から背後の壁面までが近い。
なので大型犬の泰楽なら足が届いてステップを利用しなくても踏ん張ることができる。
一方でここだけは壁面が遠くて確実にステップに乗らないと上り下りができないのだ。
つまり、「はしごを正しく使う」技術を求められる
ワンコにこれはキツい。


ところが泰楽がはしごを使うのが上手だった。
私が手を添えたものの、普通に一歩一歩ステップを踏みしめて下りることができた。
いつ会得したの!?
飼い主がびっくり。


踏ん張りどころは、まだまだ続く。
はしごを降りた先には、見上げるようにそそり立つ鎖場「カミナリ岩」が立ちはだかっていた。実は今回最大の難所はここだと予想していた。
一般的に乾徳山の難関と言われているのは、ここと山頂直下の「鳳岩」
しかし後者には巻き道がある。
ところがカミナリ岩については、いくらネットで検索しても巻き道の情報は出てこない。
だから「70%カミナリ岩でUターン」と想定してここまで来た。

まず、右側に回ってみる。
3m進んだらすっぱり切れ落ちていた。
無理。


次に一人で登ってみる。
傾斜は50度くらいだし、表面が凸凹しているので慣れた人なら鎖無しでも登れるだろう。
握力が無い泰楽でも私がお尻を押せば問題ないはず。

だが、カミナリ岩はそんなに親切ではなかった。
下からでは見えないが、その岩壁を登り切ったあとに、さらに2mほどの壁が待っているのだ。
それが正真正銘の垂直
いくら泰楽が現役バリバリの4輪駆動でもこれは無理。

では、どうしたのか。
結果としては家族全員で登った。
その方法は、普通の感覚では危険なのでここには書かない。
簡単に言うと沢登りの経験を生かしたということ。
なので、一般的な犬連れ登山者は、ここでUターンを強くお勧めします。
なんなら扇平まででも十分に楽しいです。

苦労してカミナリ岩を乗り越え、しばらく進むとついに稜線に出た。
視界がパーンっと広がり富士山と南アルプスが並んでいる。
ただし再び薄っすらなシルエット。

燦燦と降り注ぐ太陽の光を真上から浴びながら霊峰を眺め、「いいねぇ、いいねぇ」とつぶやきつつ歩く。
すると左側に脇道が伸びていた。
伸びていれば入っていくのが人情。
そのまま吸い寄せられるように進む。


その突き当りは、三角形に突き出た岩床だった。
まるで南アルプスを観客とした舞台のように空中に向かって突き出している!

その先端に立つ。
そこは数百メートルそそり立つ大岩壁の上。
見下ろすと下界が小さすぎて現実味が無い。
鳥のように空を飛んでいる感覚だ。


富士山、南アルプス、下界、遠くを見つめた直後に視線を右側に移すと、目の前に足元よりもさらに壮大な岩壁が山頂に向かってせり上がっていた。

繰り返すが、私の高所恐怖症偏差値は65。
クラスで3番目くらいに臆病。
それでもここは恐怖より暴力的ともいえる爽快さが勝る

とはいえ、これには裏話がある。
写真では天空の岩峰にぽつんと立っているように見えるが、実は万一そこから落ちても2段階くらい足場があるのだ。
つまり、写真映えするのに比較的安全。
本当に涙が出るほどいい場所。
ここだけで写真を夫婦合わせて100枚くらい撮ってしまった。


ここまで来れば山頂はすぐそこ。
その直下に今コースのラスボス「鳳岩」があった。
高低差は10mくらいでカミナリ岩と同等。
だが、こちらは本当に垂直に近く、さらに表面に凸凹がなくてまさにツルツル。
なので腕力だけを頼りに登るしかない

我々は当然、右側の巻き道を選択するはずだった。
ところがである。
嫁さんが鳳岩を前にして動かない。
ずっと指をくわえて見上げている。
嫁さんのDNAに冒険家が刻まれているのは周知の事実。
仕方がない。

「オレと泰楽は巻き道で登るから、先にここから登っていいよ」
「ただし、巻き道の上で待っててね。泰楽で苦労するかもしれないから」

彼女の表情が、ひまわりの開花の瞬間のように弾ける。
大至急、飛びつくように鎖を握った。
今度、指をくわえて見上げるのは泰楽。
く~ん、く~ん、とうるさい。

「いいか、泰楽。お母さんの暴れん坊ぶりをしっかり目に焼き付けるんだぞ!」 
私も大岩壁に取りつく彼女を見上げた。


ところがである。
3メートル登った地点で止まってしまった。
足だけが上下に動いている。
まるでムーンウォークをするマイケルジャクソン。

「あれ!?あれ!」
彼女の焦り声がツルツルの岩壁に跳ね返る。
そしてスッテンコロリン。
両足を投げ出し、ただのぶら下がる人になってしまった。
彼女は「心は冒険家」「腕力は中学生以下」だったのだ。

「諦めなさい。左側から途中まで鎖無しで登る人もいるらしいぞ。そうすればツルツル地帯の上から鎖を掴んで登れる」
ユーチューブの豆知識を伝授したが、それでも登ることはできなかった。

やはり鳳岩は腕力勝負。
他の人が登る様子も見ていたが、結構な割合で女性は諦めていた。
目安は腕立て伏せを20回できるくらいの筋力だと思う。

なので結局は家族全員で巻き道へ。
でも、ここも簡単ではなかった。


泰楽の鬼門であるはしごが2本もあったのだ。
しかしながらこちらはステップが裏の岩壁にくっ付いていたので、最初のはしごよりはスムーズに登れた。


そしてやっとの思いで登頂成功!
ここまでで4時間45分も費やしてしまった。
コースタイムの1.5倍
おもな原因は、
・カミナリ岩の攻略
・空中舞台の撮影
・鳳岩のムーンウォーク
だ。

肝心の山頂の様子は、直径1mの岩が敷き詰められた細長い広場。
富士山、南アルプスはもちろん、金峰山、大菩薩嶺も望める360度の大パノラマが広がっている。
ただし、本当に大岩しかない。
平地が無い。
なのに人がたくさん。
みんな岩の上にちょこんと座ってご飯を食べている。


でも、ちょっと端に行けば数百メートル落下のデインジャラスピークだ。
落ち着かないので撮影が終わったら、さっさと下山開始。

「頂のんびリスト(ランチ)は、空中舞台で行おう!」と思ったが風ビュービュー。


結局、毎度おなじみの「帰宅時間が気になる」事態に陥り、扇平で簡単に済ませることにした😅でも、帰りが遅くなった分、大草原は360度貸切り。
泰楽は、富士山と大菩薩嶺に見守られながらサツマイモにがっつく。
食後は、泰楽と一緒に大の字になったり、「泰楽ちゃ~ん!」と叫んだりの親バカ大会を開催。


下りは国師ヶ原を通るルート。
ミズナラの森。
傾斜が、かなりきつい。
上りで使わなくてよかった。


急傾斜の終点は高原ヒュッテ。


そこから先は、車も通れる幅広の平坦な砂利道をひたすら歩く。
その後、道満尾根との合流地点につながり、もと来た道をたどる。

8時間14分・7.7㎞の山行。
予定より1時間30分遅い――。
でも、満足度は過去最高値。
扇平の爽快さと山頂近くの大岩壁のド迫力の組み合わせは唯一無二。
帰りに駐車場のオーナーに聞くと、5月のツツジと10月の紅葉がこの山の一番の魅力だという。
ぜひ、その時期に再訪したい。

【頂のんびリスト】に対する想いをnoteに綴りました。こちらからどうぞ↓
波乗りも登山も飽きた50代が、8歳の愛犬との想い出づくりのために選んだ道

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