あの大岩壁はまさに千葉の妙義山だ!
2026年1月24日 てんくら見晴らし予報◎(12時から△) WINDY:雲なし
高宕山に登るのはこれで4回目。
私は飽きっぽい。
なので完全に満足した山に再度登ることは極稀。
ならば、なぜ4回も登るのか?
それは、まだ山頂から富士山を拝んでいないからだ!

7時35分、駐車場に到着。
キャパ12~13台中9番目(下山時は路駐の嵐。合計約20台)。
相変わらず人気だね。
気温-3℃。
クルマから出た瞬間、冷気が刺さって涙目になる。
南房総でも山中は、ぜんぜん温暖じゃない。

7時47分、登山開始。
薄暗い杉林の緩やかな傾斜を登りはじめる。

でも、往路で暗いのはここだけ。
スタートして150mで林を抜ける。
足元には北八ヶ岳のように苔むした岩がゴロゴロ。
所々に石切り場の痕跡あり。

そこからわずか5分で石射太郎山の展望スペースに出る。
運よく水仙の花が見頃を迎えていた。
周囲に爽やかで甘い香り漂い、ほろ酔い気分に。
ここにはかつてニホンザルの餌付けが行われていた小屋もある。
(のちほど再登場するので覚えておいてください)

左側を見上げると厳つい岩角が天を突き刺していた。
岩射太郎山脇の岩塊だ。
多くの人は、そこを知らずに高宕山へ向かう。
だがそれは100%もったいない。
早速、向かう。

といってもわずか50m程度だ。
登りきると、そこは2帖ほどのスペースで石鉢と山頂標識がある。
東側の見晴らしはバツグン。
一切遮るものがない。
これから登る高宕山の姿もよく見える。
逆光に目を細めながら南房総の山々を見渡す。
一方で西側は、やや樹木多め。
だが、主役はこちらに存在していた。
👀👀👀

振り向くと、どかーんっと富士山が鎮座していたのだ!
左右に長々と伸びる裾野もはっきり。
ここからこんなにはっきり見えるとは知らなかった!

さて、その霊峰側には気になる案内板が掲げてある。
「フナ池・お立ち台 初心者不可」
“お立ち台”!?
バブル期のそれを知る身としては行かないわけにはいかない!(2回目だけど)

その道のりは注意書きのとおりかなり厳しい。
スキーの最上級者コース並みの急傾斜。
ロープはあるが地面が乾ききったザレ場で滑りまくる。
万一、ロープから手を放して滑ったら、その先の岩壁は落差50m。
ほぼ助かる見込みはない。
初心者不可というより、ロープに掴んで自分の体重を支えられる腕力が必要だ。
先日登った“千葉のマッターホルン”伊予ヶ岳では、岩壁の途中で立ち止まることができる。
だが、ここでは滑るので難しい。
伊予ヶ岳の危険度が8ならここは10だと思う。

そこまでしてたどり着くのが“お立ち台”。
落差50mの大岩壁に突き出たステージだ。
そのスペースは、短辺1m、長辺2mの二等辺三角形。
向かって左側が大岩壁につながっていて、高さ1.5mほどのステージによじ登ることができる。
登るのは身長2mの覆面レスラーにタックルするくらい怖い。
でも、ここまで来て登らないのは漢じゃない。
泰楽に待っているようにお願いして、大岩壁の接合部へ下りる。
私の高所恐怖症偏差値は65。
クラスで3番目くらいに苦手。
ステージに両手をついて「行くぞ!」と気合を入れた瞬間、脇から汗がどっと噴き出した。
手のひらに力を込めジャンプ!
だが、毎日腕立て伏せをしているとはいえアラフィフ。
一発では登れなかった。不格好に岩にしがみつく。
仮に落ちても後ろ側のスペースが広いので滑落はしない。
でも、落ちたら自分の年齢に負けた気がする。
それだけは避けたい。
腕をぷるぷる震わせて自身の身体を上方へ移動させる。
同時に片足をステージの上にかける。
そこにも力を込める――。

次の瞬間、ハイハイの恰好でお立ち台の上にいた。
それから生まれたての仔馬のようにぷるぷると立ち上がる。
視線を徐々に足元の岩床から50m下の森に移動させる。
その落差は、まるでジェットコースター。
一気に落ちる!
吸い込まれる!
いかん、いかん!と正面を向く。
そこには、まるで富士の樹海のように青々とした南房総の深緑が広がっていた。
両手を広げて深呼吸。
怖い。
だから美しい。
はっと思い出して振り向く。
泰楽が「お父しゃん、大丈夫?」とやや頭を下げてオスワリしている。
「大丈夫だよ!」と手を振る。
彼はペロッと自分の鼻を舐めた。
登山を開始して約30分。
すでにやり尽くした感でお腹いっぱい。
気持ち的にはヘトヘト。
奇岩で知られる妙義山(群馬県)の大砲岩の恐怖度が10なら、このお立ち台は5くらいかもしれない。
でも、私にはこれが限界だった。
もう行かないーー。
だが、見るべきところはまだまだある。
大至急、旧サルの餌付け小屋まで戻る。

途中の山頂脇の岩角もエグかった。
こちらは登山道から直接突き出したお立ち台。
ただし、立ってはいけない。
あまりにもトンガリ過ぎている。
印象的には鎖で囲まれていない伊予ヶ岳の山頂。
危険極まりない。
伊予ヶ岳の様子↓
伊予ヶ岳で犬連れ初詣登山|千葉のマッターホルンで鎖場に挑み、富士山の大絶景をゲット!

旧餌付け小屋を過ぎるとすぐに「富士山・東京湾展望台」という案内板が立っていた。
コロナ中はなかった気がする。
首をかしげながら案内に従う。
すると――。
👀👀👀

まさかの岩射太郎山以上にくっきりの富士山!
ここまで直接登れば約10分。
なんてコストパフォーマンスのよい山なんだ!

その後も、このコースはホスピタリティにあふれている。
基本的にアップダウンが少ない尾根歩き。
周囲は落葉樹なので、冬季は明るい日差しに包まれる。
スタート時は前後に5~6人の登山者がいた。
だが、岩射太郎山へ寄り道している間に見渡す限り無人に。
耳鳴りが響き渡るほどの静寂を包まれる。
ときおり頭上で北風がゴゴゴーっと枝先を揺らす。
でも、こちらに届くのは頬を撫でる程度。
先ほどの脇汗が軽やかに乾いていく。
ふと視線を右側に向けた。
木立の隙間には富士山。
その先でもときに大胆に、ときにそっと見守ってくれていた。
大胆はすぐにやってきた。
登山道から、どうみても脇道が伸びている。
案内板はない。
試しに行ってみる。

すると突き当りが岩床の展望台になっているではないか!
広さは8畳ほど。
その先には、なんと再び富士山がどーんっ!
周囲270度は断崖絶壁。
先日登ったトビ岩山そっくりではないか!↓
トビ岩山‐千葉県で犬連れ登山|登頂したらイキナリ富士山どーん!県内最長クラスの岩稜も
一流の天上テラス。
ここから眺める霊峰も大きい。
おそらく千葉のメジャー山頂から見える富士山は、鋸山からが一番デカい。
距離が近いから。
でも、印象的には同じくらいのサイズ感で迫ってくる。
「まさかここから!?」という感激がそう見せるのかもしれない。
ここまで来てUターンだけでも、県内トップクラスの満足度だと思う。
個人的には、高宕山で一番落ち着く場所だった。

ところが高宕山は、さらにもてなしてくれる。
今度はきちんと「浅間様」という脇道の案内板があった。

その先には石祠が鎮座している。
そこから周囲を見渡すと――。

またまた富士山!
ちなみに「浅間」とは富士山を指すこともあるらしい。
これで富士山の展望台は4つ目。
どんだけ楽しませてくれるのだろう。

浅間様の先には大きく切り開かれたベンチ付きの広場がある。
団体さんにはありがたいのでは?

その先にはザレて滑りやすいトラバースがあった。
初心者は要注意!

コース自体にも高宕山ならの魅力が続く。
まずゴルジュ(沢登り用語)のような岩壁に挟まれたルートが登場。
千葉といえば鋸山。
そこにも岩のルートはあるが、あちらは刃物で切り取った無表情な回廊。
こちらは岩肌が表情豊かで温かみがある。

私が興奮すると泰楽も興奮する。
とっさに木の棒を拾って振り回す。

するといきなり憤怒の形相で立ちはだかる対の仁王像が現れた。
空気が引き締まる。
でも、泰楽は棒に夢中。
罰が当たりますよ!

恐る恐る間を抜け石段を上がっていくと、これまたいきなり岩壁にめり込むように建てられた仏閣が現れた。
高宕観音堂だ。
本当に「なんでわざわざめり込んでるの!?」と腰を抜かしてしまうほどの唐突感と神聖感。
ここは遅くても江戸時代中期には修行の聖地であり、地域の人々の心の拠り所となっていたそうだ。

なるほど、お堂からの景色も素晴らしい。
ちなみに建物の周囲は岩がくり抜かれて1周できます。

登山道は、お堂から素掘りのトンネルを抜けている。
そこは俗世と聖地を隔てる境界のようだ。
くぐる際、無意識に呼吸を止めていた。

トンネルを抜けると「高宕山⇒」という案内板に突き当たった。
おそらく9割以上の登山者がそれに従う。
ここで穴場情報。
実は左折ルートもあるのです。

そこはロープ場の登りもあるけど、通常の体力なら初心者でもぎりぎり行けると思う。
さっきの”お立ち台”コースの方が倍は怖い。
(責任は持てません――)

がんばって乗り越えると岩場の上に到着。
そこは「天空の岩」と名付けられたビュースポットだった。

なんと高宕観音堂がめり込んでいた岩壁の上なのです!
ここでも富士山が登場してくれた。
でも、残念ながらかなりぼやけ気味。
山頂では拝めるのか!?

だからといってこの絶景を前にして急ぐことはできない。
向かい側ですくっと起立している大岩に立つことも可能。
一見「命知らず以外ムリ!」と思えるかもしれない。
でも、近づくと足場が切ってあるので階段を上るように登頂できる。
あぁ、ここでご飯を食べて昼寝したい――。
とにかく、高宕山に登るならここに来なきゃ損!
後ろ髪を引かれつつ正規ルートに戻る。

戻ったら、突然前方から「うわわぁ~!」と黄色い歓声が響き渡った。
どどどどどお~っと地響き。
「ドゥードルですよね? 触っていいですか?」
お姉さんたちの五重奏。
泰楽に「いいか?」と聞こうとしたら、すでに太ももに横顔をすりすりしている。
若い時はそんなことせず、むしろ飼い主一筋で不愛想だった。
人間と同じでオヤジになるほど本能丸出しになるのかな?

ここまで来れば山頂まであと一歩。
だが、今コース最大の難所はここにある。
長さ10mほどのハシゴだ。
もっとも、泰楽くらいのサイズだと脇の岩を直接登れる。
無理なら左側に巻き道もある。

山頂直下にも短いハシゴあり。
泰楽がここを登るのは初めて。
前回は脇でお留守番させた。
さてどうしたものか?
時間がかかるかもしれない。
山頂に誰もいないことを確認。
泰楽のザックの持ち手を握って「行くぞ!」と声をかけた。
すると、「あいよ!」と目を合わせたと思ったら、さっさと普通にハシゴを登って行った――。犬ってハシゴを登れるんだっけ!?
犬連れ登山をはじめて12年目。
まだまだ知らないことってあるんだなぁ。

諸々感慨深く登頂成功!
時刻は10時45分。
てんくら予報では12時から富士山の見晴らしが悪くなる。
さて、実際は?

快晴!でも富士山ナシ!
残念!
でも、ここまで5カ所で拝んできたから一切悔いナシ!
山頂で毎週高宕山に登っている大先輩としばし歓談。
泰楽はここでもおじいちゃんの太ももに顔面をすりすり。
性別・年齢は問わないんだ?

下山は巻き道を選択。
ハシゴよりぜんぜん楽でした。

復路は周回の大滝コースをチョイス。
しばらく薄暗い杉林を進む。
こちらも後半は明るい尾根歩きに。

極めつけは、ベンチがある稜線上の展望台。

正面を見渡すと、マザー牧場(鹿野山)で大きな観覧車が回っている。
これだけでも雄大な景色。
だが、それ以上に気になる奇景が!
「なんだあの手前のゴツゴツの岩峰は!?」
「登りたい!」
大至急、山座同定アプリを立ち上げる。
「あそこが鹿野山だから手前は?」
岩射――。
岩射太郎山!?
さっき登った山ではないか!

あんなにかっちょいい山だったの!?
そういえばサルの餌付け小屋もしっかり見える。
お立ち台の恐怖感といい、まさに千葉の妙義山ではないか!

大パノラマを眺めながら昼食タイム。
ちょうどベンチの高さが泰楽の食卓として最適。
いつもはずっと持ってあげているのでありがたい。
カップラーメンをすすりつつ前方の岩峰から目が離れない。
ここからジャンプしたらあそこまで飛べるような気がする。
そうえいば、あの大岩壁の下を通るルートもあったはず。
どの辺だ?
妄想が止まらない。

稜線歩きが終わると沢沿いの林道に出る。
ここの出発地点は、高宕大滝だ。
その落差は県内有数の約30mらしい。
有り難いことに滝つぼまで下りるルートも整備されている。

なるほど、これはデカい。
漆黒の巨大城砦のようだ。
でも30mはない。
見える範囲の上にもあるのかな?
目を凝らしていたら、滝面に白い汚れのような部分が広がっている。
「鳥のフン?」
「水が流れているのに?」

再び視野を広げる。
反対端に鋭い滴りが。
つららだ。
まさかとフンに目を戻す。
氷だ。
なんと千葉にも氷瀑があったのか!
北関東まで見に行こう考えていた。
なんだか得した気分で、背中がムズムズする。

林道は、ところどころ崩落していてクルマは通行不可。
人間もぎりぎり歩けるという感じ。
ピンクリボンも多数つけられている人気ルートだが、崩落部分のトラバースがザレてて安心とはいえない。
慣れてない人は、途中でしゃがみこんで動けなくなっても不思議はない。

ちょっと嫌な道だな、と感じていたら本格的な氷瀑が登場した。
高さは背丈程度だが、幅はナイアガラクラス。
本当にここは千葉ですよ!
最後のトンネルをくぐりゴール。
たっぷり泰楽と遊んで、写真も撮って5時間25分、7.5㎞の山行でした。
山頂も含めれば6つの富士山展望台。
正直、ほとんど同じ構図だが、さすが霊峰、出会うたびに胸に清水が染みわたるような快感を覚えた。
さらにスリル満点の岩登り、爽快な稜線歩き、ちょっと手ごわいハシゴ場。
高宕山は、低山の楽しさのすべてが詰まっている。
しかも、コースを選べば初心者もOK。
このバランスの良さは千葉県で随一だと思う。
個人的には、紅葉や氷瀑が期待できないなら、山頂からピストンします。
ただし、初心者やお年寄りに“お立ち台”は絶対にお勧めしない。
あそこで事故が多発すれば「千葉でもっとも恐ろしい山」という負のレッテルを貼られかねないから。

コメント