白谷ノ丸・ハマイバ丸(山梨)|富士山に向かって歩く絶景稜線と真っ赤な紅葉の両方を楽しめるお手軽コース

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白砂の天空ビーチから富士山・南アルプス・八ヶ岳を一望!
2025年11月1日

腰が抜けるほどの富士山。
気絶するほどの紅葉。
この二大巨頭を両立させる山は少ない。
というか、知らない。

富士山の周辺はススキばかりで「紅」がない。
「紅」を求めると富士山が遠くなり見えても”ちょこん”――。

だが、可能性を感じている山がある。
山梨県の白谷ノ丸(標高1920m)だ。

5月に登ったときには、夢に見たような緑の稜線と富士山のコラボに腰が抜けた。
また、樹林帯に入ってからはモミジが多いこと!
場所によっては、斜面のすべてが色づくような顔ぶれだった↓
白谷ノ丸・大蔵高丸(山梨県)|富士山と並んで歩ける絶景稜線-2000m級とは思えない手軽さ!

これは実力を確認しないわけにはいかない。
例年の見頃は10月下旬。
ところが週末に限って雨の連続。
結局、11月1日に行くことになった。


高低差が少ない今回のコースの最大の難関は、登山口に到着するまでの林道・焼山沢真木線
見てよ、このグネグネっぷり。
ナビ画面で確認した瞬間に行く気が失せる。

だが、実際に走ってみると、そうでもない。
ほとんどがしっかし舗装されていて走りやすい。
しかも、後半からは富士山の巨体が迫ってきてワクワク感も演出。


ラスト数百メートルだけ砂利道で、「かなりビビった」といった感想も見かけるが、乗用車でもまっすぐ走れる腕があれば大丈夫。
沢登りや渓流釣り愛好家なら平均的な林道だろう。


8時45分、登山口となる湯ノ沢峠駐車場に到着。
ここは10台以上停められて、立派なバイオトイレと避難小屋もある。
文句なしの登山口だ。

先客は4台。
降りた途端、冷風がごぉーっ!
顔面にぶち当たり涙がにじむ。
大至急、ザックから中綿入りの上着を出す。
早く出発しないと紅葉が吹き飛ぶ!


だが、この時点で見どころが。
駐車場手前の森が真っ赤!
ぐんっと胸が高鳴る。

だが、地面も結構紅く染まっている。
見頃を若干過ぎて八分咲きといったところか。
ここの標高は1650m。
狙っているモミジ通りは同等か1700m上くらい。
なんとか残っていてくれ!

9時10分、登山開始。
気温9℃。
てんくら予報では快晴だけど風速12m予報。
50m進んだ時点ですでに指先と耳がじんじんしてきた。
耳当てを装着。


100m進んで湯の丸峠に到着。
左に行けば白谷ノ丸。
右に行けば大蔵高丸・ハマイバ丸。
まずは白谷ノ丸へ。

ここからは風よりも地面が心配。
前夜は1時間に20㎜クラスの豪雨が降った。
ぐちゃぐちゃ泥々で靴の中まで汚れたら戦意喪失は間違いなし。
一応、ゲイターを持参し、泰楽には履かせてきた。


だが、その備えは不要だった。
そもそも地質は砂系なので水はけがいい。
おまけに厚さ10㎝前後の落ち葉の絨毯が敷き詰められているので土が出ている場所が少ないのだ。
なんて高性能な地面なんだ!
家族全員ご満悦で進む。


するとあることに気づく。
ここの地面も紅いではないか!
見上げると360度どこかしらに紅く色づいたもみじの姿が。
間隔が空いているので紅葉のトンネルとまでは言えないが、なかなか見応えのある佇まい。
その2割が落葉して紅い絨毯を生み出していた。


しかも、どれもが一般的なイロハモミジより二回り大きく豪華。
まるでレッドカーペットで出迎えられたようだ。
これは、しょっぱなから気分がいい。

前回ここに訪れたのは5月下旬。
ミツバツツジの面々が出迎えてくれた。
そのときと似た間隔と感覚だ。
登山コースから少し離れた場所で群生しているところも同じだった。
木立の隙間から甲府市を丸ごと蓋をしたような雲海が覗いていた。


白谷ノ丸方面の前半は、ずっと森の中で中程度の傾斜が続く。
でも、紅葉と雲海とチラ見せしてくれる富士山でテンションが上がる。
泰楽もその気持ちが伝わるのか、私たちの周りをぴょんぴょん跳ね回って止まらない。


スタートして35分で小展望台(自称)に出た。
期待どおり白銀を頂いた富士山がどーんっ!
前回と違って雲一つなくシルエットが裾野の先までスッキリクッキリだ。
空気が澄み切っている。
目を凝らせば山頂で手を振る人が見えそうだ。
これだけでも一般的には狂喜乱舞級。
でも、その先の絶景を知っているので、あえてクールを装う。

しかしながら、霊峰の背景は灰色。
ここは天気予報外れ。
強風が泰楽の顔毛をゆがませる。
時間が経てば弱くなる予報。
「裏切らないでよ~!」と願いつつ山頂を目指す。


44分で森林限界を抜けた。
目の前にぶわっと絵本に描かれたような広々とした草原が広がる。
ここでも家族全員クールな対応。


55分で白谷ノ丸の頂(1920m)に到着。
ヤマップでは山頂標識の背後に黄色一色に染まった木々が並んでいた。
でも、このときは骨組みオンリー🥲
やはり、前夜の豪雨の仕業だろう。


とはいえ、ここでいよいよ狂喜乱舞解禁。
見てください、この富士山!
左右へ優美に伸びる裾野。
頂の新雪、手前の彩り豊かな錦秋と草紅葉のコントラスト。
銭湯の絵をそのまま切り取ったような完璧な構図。

ここでカップル登山者と少々会話。
男性の方は2回目の登頂。
前回はゴールデンウィークの、ど真ん中に来たそうだが、あまりの絶景と人の少なさに仰天したそうだ。
このときも小金沢山方面から登ってきて、ここの眺望が一番いいと語っていた。


それはそうだろう。
だって、絶景はこれだけではないのだから。
富士山に向かって「ほえぇ~っ」とひれ伏した後に、首を右にひねれば南アルプスがメンバー総出でずらずらずら~っと整列している。さらにグイっとひねれば、こちらも雪を載せた八ヶ岳がずらっと並んでいる。
このときは間ノ岳の雪化粧がひと際輝いており、北岳と甲斐駒ヶ岳が先端だけ雲隠れしていた。
手前の甲府盆地を蓋する雲海もいい仕事をしている。


さらに驚くことに富士山から首をグイっと左にひねると東京の高層ビル群も望めた。
天を突き刺すスカイツリーのシルエットもくっきり。
強風なんて気にならない!
カップルがいなくなった山頂で感激に浸る。

でも実は最大のお楽しみはこれから。
今コース1番の見せ場は、白谷ノ丸から150m離れた白谷小丸なのだ。


Uターンし、草原を少しだけ下る。
この草原に包まれながら富士山と一緒に歩く風景が個人的には一番のお気に入り。


そして白谷ノ丸(1890m)に到着。
そこは白砂が敷き詰められた天空ビーチ。
360度の大展望で、白谷ノ丸より富士山が近い!
おまけに手前にはモコモコと秋色に咲き誇る山肌が広がり、霊峰の存在感を引き立たせていた。
周囲300mは無人。
貸切の大展望台で思い切り、てんやわんやの大騒ぎ。
あぁ~、ここに家を建てたい!


このときすでにやり尽くした感を覚えていたが、まだ目的の紅葉に出会っていない。
25分で湯ノ沢峠まで戻って、今度は大蔵高丸・ハマイバ丸を目指す。
このへんてこりんな往復が今コースの唯一の欠点。


峠から100mほどでゲートが登場。


その先は天然のお花畑となっており、獣害から守られているのだ。


お花の見頃は夏。
だからこのときは草紅葉状態。
黄金色の塊が風に波打っている。
これはこれで風情があっていい。

ただし、主役の富士山は、ここでは大蔵高丸に遮られている。
草紅葉以外に見どころはないかとキョロキョロ。
あそこは南アルプスで、その隣が八ヶ岳。
ここまではもう見た。
だが、その隣にもデカい山塊が出てきたぞ――。
大至急、スマホで山座同定。

Labeled by PeakFinder

金峰山に北奥千丈岳――。
奥秩父主脈ではないか! 
手前の大きな山肌も黄金色オンリー。
カラマツしか生えていないのかな?
その上の空は真っ青だ。
やっと晴れた!

周囲を見渡すと近くの山々はパッチワークのように色づいている。
草紅葉に包まれながら五色の錦秋と青空を望む。
豪華ではないか!

その後は、個人的に大好物のダケカンバの森に。
それを抜けたら再び草紅葉。


さらに進むといよいよモミジロードとなった。
ところが残念!
9割以上が落葉。
足元に厚さ10㎝以上で積もっている。
その一枚一枚を観察すると7割以上が黄色系のモミジだった。
つまり、見頃時はここが真っ黄色のトンネルになるのだ――。
本当に残念!

だが、ヤマップで調べたところハマイバ丸直前に真っ赤地帯がある。
そこに賭けるしかない。


湯ノ沢峠から45分で大蔵高丸に到着。
ここで再度富士山が登場
白谷ノ丸より近くて迫力アップ。


南アルプスの北岳と甲斐駒ヶ岳も、やっと頂を見せてくれた。
後は真っ赤さえ揃えば満点!


ふわふわのススキが「ようこそ!」と手を振るお花畑を縫うように進む。

やがて森林に入る。
しばらくは黄色の落ち葉を踏みしめる。


それが突如、真っ赤に。
ふと顔を上げる。
そこも、その向こうも、その先も真っ赤。
もう体育館ぐらい地面が真っ赤。

だが、その上は冬模様。
ほとんど葉が無い。
やはり遅かったか――。

がっくり肩を落とし、這いつくばって紅い葉を撮影する。
木の上だろうが、地面だろうが紅は紅。
新しい紅葉狩りのスタイルを発見。


この真っ赤地帯のすぐ先がハマイバ丸の頂だった。
スタートから4.9㎞・3時間48分で登頂。


一カ所だけ開けた場所で富士山と対面しながらランチ。


メニューは、あずきと餅のホットサンド。
泰楽は家でチンしてきたサツマイモを頬張る。
1時間の休憩。
その間で出会ったのは一人だけ。

復路は1時間で下山。
5時間40分・7.8㎞の山行でした。
その間にすれ違ったのは5組だけ。

一方で同じ稜線上の大菩薩嶺は満員で長蛇の列だという。
大菩薩嶺はドカ雪が降った後しか登っていないが、見どころは1㎞の稜線だけだった。
確かにあの尾根道は格別。
だが、トータルで考えれば今回のコースの方が断然楽しい。

富士山と紅葉を同時にこんな高レベルで楽しめる山をほかに知らない。
たとえ紅葉を見逃してもめちゃくちゃ楽しかった。
なのにいつもガラガラ。
登山口までの道のりが面倒だからかな?
ならばクルマの運転が苦にならない人にとって、かなりの穴場だと思う。
来年も紅葉の時期に必ず登ろう!

帰路では天目山温泉(標高980m)で入浴。
520円。
露天風呂付きでコスパ高い。
露天沿いの葉は真っ青。
紅葉は2週間先だった。

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