大型犬のしつけ②「しつけが必要な理由を考える」

犬嫌いの人の割合は約25%!?

なぜ、私はしつけにこだわるのか?
それを話すとちょっぴり長くなる。

私は物心ついたときから生き物が大好きだ。
その中でも特に興味があったのが大型犬。
(クワガタと熱帯魚も同レベル)

きっかけは幼稚園の頃、ご近所にいた秋田犬。
その子の毛色は黒とグレーのまだら模様(胡麻毛?)。
今まで見たどの犬よりも大きかった。
(たった6年くらいの人生経験だったけどね)

はじめてその犬を見かけたとき、お腹に「どんっ!」と響くような衝撃を覚えた。
のっし、のっし。
のっし、のっし。
見上げるような大きさの動物が歩いて来る!
鼻水をだら~んと垂らしながら目が離せなかった。

その日から遊び相手が見つからないときは、実家から200mほど離れた秋田犬に会いにいった。
当時は、もちろん外飼い。
毎回フェンスの隙間に手を突っ込んで足先を撫でていた。
今考えると気難しい子が多い秋田犬に対してチャレンジングなことをしているが、その子は、ただ黙ってじっとしていたような記憶がある。

大型犬かっちょいい、かわいい、毎日枕にして寝たい。
だから、「大人になったら絶対にデッカい犬を飼う」と決めた。

とはいえ、ムツゴロウさんのように「動物に対して恐怖感ゼロ」というタイプではなかった。
このことを痛感したのは、たしか小学1年生のとき。
ある日、クワガタを採るために農家がぽつん、ぽつんと立つ細い舗装道路を歩いていた。
そこに突然大型犬が現れた。
焦げ茶と白のツートン。垂れ耳。長い脚。
イングリッシュポインターだ。

しかも、首に引きちぎった鎖がぶら~~ん
足がガクガク震え、後ずさりもできない。
この状態が10分くらい続いたと思う。
やがて犬は「やっぱやーめた」という表情でどこかへ行ってしまった。

「犬は怖い」
生まれてはじめてそう思った。
それでも「大人になったら大型犬を飼う!」という気持ちは変わらなかった。

そして30代になって注文住宅を建て、やっとこさ大型犬を迎える準備が整った。
狙うは40kgオーバーになるバーニーズマウンテンドッグだ。

そこで思い出したのが幼少期の鎖ちぎりポインター恐怖体験――。
愛犬との理想の関係は、少年ネロとパトラッシュ(フランダースの犬)。
要するに親友同士になること。
だが現実は、そう甘くない。

犬というものは吠えるし、飛びかかるし、場合によっては噛みつく。
体重40kgを超す大型犬に噛みつかれたら大ケガでは済まないかもしれない。

大型犬を飼うことを考えるとウキウキする。
だが、冷静に考えると罪を犯す可能性がある動物を家族として迎えるわけだ。

「家族」と言うキーワードが頭に浮かんだ時、自分には子どもがいないが、いたらどう教育するかを犬の場合と比較して想像してみた。

どれも人間なら「かわいいから仕方ないねぇ~」では済まされない。
明らかに犯罪だ。

自分の子どもを犯罪者にしていいのか?
いいわけがない。だから人間の子どもには教育が必要なのだ。

犬にとって教育はしつけ。
「教育=しつけ」によって他人に迷惑をかけない犬に育てなければならない。
私が、しつけにこだわる一番の理由はこれだ。

大型犬はパワーがあるので罪を犯した際の被害も大きくなる。
飼い主は、それこそ刺し違える覚悟で止めなければならない。

「大型犬を飼うなら刺し違える覚悟が必要」
この話を男の子がふたりいる友人にしたらドン引きされた。
「たかが犬のしつけでしょ」と。

そこで私は「なら、お前の息子が目の前の路上で刃物を振り回したらどうする?」と聞いてみた。
すると彼はじっと遠くを見つめて考え、観念するように「身体を張るしかないね」と答えた。

そもそも街中で叫び続けたり、親から逃げ出したりする子どもは幸せを感じているのだろうか?
私はそんな子どもに育ってほしくない。

また、愛玩動物飼養管理士の勉強をする中で、犬嫌いの人が意外に多いことを知った。

内閣府「動物愛護に関する世論調査」(2010年)で、「ペットを飼うのが好きなほうか」という質問に対し、「好き」と答えた人は72.5%、「嫌い」と答えた人は25.1%だった。

さらに「東京都における犬及び猫の飼育実態調査」によると、「犬が嫌い」と答えた人は5.4%で、「好きでも嫌いでもない」の26.4%と合わせると3割を超える。

このようなことから、「世の中の人の4人に1人は犬ウェルカム派でない」と考えてよさそうだ。
なので私は、「山頂に10人いたら3人は犬嫌い」と思うようにしている。

実際に毎週のように犬連れでアウトドアを楽しんでいるので、犬嫌いの人に接することは少なくない。
特に印象的だったケースは3つ。

①すれ違いざま「ケッ!」事件
ゴンドラに大型犬も乗せられるという「犬ウェルカム」な雪山へ登りに行ったときのこと。
急斜面を先代犬(バーニーズマウンテンドッグ)と登っていると10m前方から、60代と思える3~4人のおばちゃんグループが下りてきた。
ちょうどその地点は1本の登山道が二手に分かれて数m先で再度1本になる場所。
私たちは左側のルートの端に寄り、リードを付けた先代犬をルートのさらに外に出してから、自身の身体を覆うようにして犬が飛びつかないようにした。
その上で「どうぞ~」と声をかけた。
すると先頭の2~3人は右側のルートを「どうも~」と頭を下げながら下りて行った。

ところが最後のひとりは、私たちが待つ左側ルートをわざわざ下りてきて、すれ違いざまに「ケッ!」と吐き捨てるように言って先代犬を睨んだのだ。

その山は犬ウェルカムで関東甲信越ではかなり知られている。それでも犬嫌いの人がいることを思い知らされた。

 

②全身硬直事件
関東の二百名山でのこと。
秋の紅葉を存分に楽しんだ下山途中、10mほど前方に30代と思える女性ソロ登山者が見えた。
私は大至急、泰楽を登山道の外へ出し、自身の身体で覆ったうえで「どうぞ~」と声をかけた。
すると彼女はオロオロと目が泳ぐだけで動こうとしない。
なので私は「なんで?」と思いつつ下りて行った。
そしてすれ違う際に「すみませ~ん」と声をかけると、彼女は脱兎の如くバッと2mほども飛び退いた。
この時点でやっと気がついた。
おそらく彼女は犬が怖くて仕方がなく、身体が硬直していたのだ。

③鎌を振り回し事件
そこは関東のカヌーイストなら誰もが知っている川の河原だった。
川の様子を確認しようと泰楽と一緒にクルマを降りると、100mほど離れた場所にジムニーが停まっていた。周囲に人の気配はそれだけ。
それでも念のため泰楽にリードを付け、嫁さんと立ち話をしていた。
すると背後からいきなり「おいっ!」。
振り向くと約50mの距離に60代と思えるおじさんが立っていた。ジムニーから降りて歩いてきたのだ。
手には鎌を持っている。
「そいつがオレに近づいてきたら、これで首をかき切ってやるからな!」
彼は鎌を振り上げて叫んだ。
その瞬間、嫁さんは顔面蒼白。
私は恐怖を通り越して呆気にとられてしまった。
どう考えてもまともじゃない。
そうですか、そうですか、犬がお嫌いなんですね(または地元の人で糞被害に遭っているとか)と思い、「分かりました」と返事をして嫁と泰楽をクルマに乗せた。

このような暗い気持ちにさせられる経験は、犬連れアウトドアを続けていれば必ずするはずだ。
それでも続けたいなら、犬嫌いの人から「そこまでするんだ。だったら文句は言えないな」と思ってもらえるようにモラル遵守を貫くしかない。

だからしつけにこだわり、泰楽にはウンチ袋を背負わせ、すれ違う人に「かわいいぃ~!」と黄色い声を投げかけられても自分自身の身体で壁をつくって、登山ルートを空けるようにしている。
それでも触りたい、写真を撮りたい、と言われれば、泰楽に聞いたうえで喜んで応じている。


いくら飼い主が「かわいい!」「ウチの子最高!」と思っていても、嫌いな人は嫌い

次回は実際に行ったしつけの方法を、先代犬の経験から順に書きたい↓
https://large-dog.iehikaku.com/archives/4075

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました